情報の森コラム

エコなのか、エコじゃないのか。モノとモノの相性

[エコ/サステナビリティ] 2012.7.10

突然ですが、いろいろな方に、「なぜ、ワインの栓は、コルクなの?」とよく聞かれます。確かに抜くのは面倒だし(だいたいうまく抜けないし)、包材としてコストもかかりそうだし(その分高くなっているんじゃないのか!!)、メーカーだって専用の機械や保管も大変だろうし…。はっきり言って時代遅れで使い勝手の悪い栓というイメージです。
そもそもワインは、いつごろからコルク栓なのでしょうか。
ワインそのものの歴史は古く、紀元前8000年頃、中近東グルジア辺が発祥と言われていますが、輸送用の容器が使われだしたのは、ローマ時代にローマ軍がガリア等の遠征先でワインを楽しむため、アンフォラ瓶という陶器の大瓶を使用していたのが始まりと言われています。
ガラスは、中世の頃からステンドグラスやガラス工芸品など様々なものに使われ、瓶の原型となるものも多く存在した様ですが、“フタが無く密閉できない”、“底が丸く自立しない” 等の理由から保存容器としては普及しなかった様です。
ワインの容器として使われだしたのは、弾力性と防水性のあるコルクが栓として登場・普及し始めた1700年代で、ガラス瓶との相性がよく密閉性も保てたからです。その頃の瓶は全て手吹きで造られており、なで肩で底の広い瓶でした。今の様なスマートな瓶は、1700年代末に海外輸出の際、船底に積んで安定する用に開発された形状と言われています。この時代から今に至るまでガラス瓶とコルク栓の相性はバツグンなわけで、昨日今日の付き合いではないのです。

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ところが、最近は、コルクに代わる “スクリューキャップ”、“樹脂栓”、“ガラス栓” などが登場し、業界では、コルク栓是非論争が続いています。
コルク栓反対派は、コルク材が主に南ヨーロッパで造られ数が少なく高価で、ブショネという異臭を放つ欠陥品を生む事を理由に使用の反対を唱えています。
また、スクリューキャップとコルク栓をした “同じ銘柄・収穫年度のワインボトル” を10年間同じ状態で保管し結果を見るという実験では、ほぼ両者変わりなく、むしろスクリューキャップの方が鮮度を保ち良い熟成をしていたという結果が出ています。
よく言われる “コルクは呼吸をしている、外の空気を通しゆっくりとした酸化熟成に不可欠である” という定説は、この実験では立証されず、むしろ熟成には、充填時に瓶内に残った僅かな空気で充分という見解でした。
結果を受けてさらに脱コルク栓化に勢いがつき、オーストラリアやニュージーランドでは、かなりの割合で、スクリューキャップに代わってきていますし、全世界的に低価格帯のワインには、スクリューキャップや樹脂製コルク栓が使われています。

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では、コルク栓はこのまま使用が減っていき、いずれは無くなってしまうのでしょうか。
フランス、イタリア、スペインの伝統国は、自国の文化と利益を守るため簡単に脱コルク栓路線には、踏み切らないと目され、その高級イメージを追随するカルフォルニアやチリも高級ワインには、コルク栓を使い続ける傾向にあります。
一見、天然のコルク樫を保護し素材の代替え化が進むのは、エコの様に感じますが、樹脂や金属の消費増大、CO2も増やす事には疑問が残ります。いや、むしろ計画的に樹皮を採取し加工して使い続けているコルク栓の方がエコな行為に思えます。
コルク樫の寿命は400年、コルク製品に使われる樹皮は10年に1回採取され計画的に保護育成されています。何百年と続いてきた伝統的やり方は、手間ひまかけて非効率ではあるものの、時間をかけて得た知恵の結晶であり、引き継いでいくべき技術と文化なのかもしれません。たぶん、コルク栓はコルク樫がなくならない限り、永遠にワインの栓に使われていくのではないかと思います。
“コルク栓とワイン瓶” 永遠に続く素敵な関係であり続けてほしいものです。

(記:丸本彰一)
〈参考文献:『ワインの歴史』 山本 博 著 2010年 河出書房新社〉

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