デザインの権利と保護

Vol.125 セミナー「ストックフォトを安心して活用するための実践講座」開催

2021.5.7

2021年3月3日(水)(講義時間15:00~16:30)「ピクスタに聞く!ストックフォトを安心して活用するための実践講座」と題して、講師にピクスタ株式会社の野口様をお迎えし、Zoomを利用したオンラインセミナーを開催しました。
利用する機会が増えているストックフォト、写真がどのような契約の中でライセンス販売されているのか。本来、利用者側が守らなくてはいけないルール、過去に起きた実際のトラブルなど、画像にまつわる権利を含めストックフォトを安心して活用するポイントを解説していただきました。
会員の皆さんにとってストックフォトが身近で、関心が高いテーマということもあり、参加者は100名を超え、事前質問、セミナー実施中もたくさんの質問をいただきオンラインにもかかわらず盛況に実施することができました。
ピクスタ株式会社の野口様、スタッフの皆様には、昨年11月の勉強会をはじめ3月のセミナー開催、セミナー終了後の質問への回答など、丁寧にご対応、ご協力いただきましたことをこの場を借りてお礼申し上げます。
(デザイン保護委員会 委員長/徳岡 健)

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ストックフォトを安心してご活用いただくために

弊社ピクスタ株式会社は、「PIXTA(https://pixta.jp/)」というストックフォトサービスを展開しております。
JPDA会員様でも弊社素材をご利用いただくことが多いとのことで、2021年3月に「ストックフォトを安心して活用するための実践講座」というセミナーを実施いたしました。(社会情勢を鑑み、Zoomにて開催させていただきました。)

画像をインターネット上で容易に取得できるようになったことから、画像の権利侵害防止のためにストックフォトをご利用いただく機会が増えきています。一方で、ストックフォトは素材だから自由に使ってもよい、と勘違いされることがあります。しかし、ストックフォトは素材である以前に、著作物であり、誰かがその画像等に対する権利を持っているものです。この意識が薄れてしまうと、利用規約違反をしてしまったり、画像トラブルに繋がってしまうことがあります。
権利、と聞くと、堅苦しく縁遠いものに感じると思います。セミナー中に画像トラブルの事例をいくつかご紹介いたしましたが、有名企業や行政機関の画像利用行為が問題になった事例もあり、権利が身近であることや、権利に対する意識が薄いとトラブルに繋がりやすいことを改めて感じていただけたのではないでしょうか。

画像にまつわる3大権利

画像にまつわる権利として様々な権利がありますが、ストックフォト利用時、特に写真素材の利用にあたって意識していただきたいのは、著作権・肖像権・商標権の3つです。

著作権

著作権とは、著作者が自身の著作物をどのように扱われるかを決定できる権利で、写真やイラストなどの著作物を制作した際に自動的に発生します。たとえば、PIXTAでは、素材を購入するお客様にPIXTA利用規約を守ることをお約束いただいた上で、素材の利用を許諾しています。あくまで素材提供者であるクリエイターが許諾した範囲でお客様は素材を利用することができるのであり、決して著作権を販売しているわけではなく、素材の使用権を販売しております。

肖像権

肖像権とは、本人の承諾なしに無断で写真等に撮られたり、それらを無断で公表されたり利用されたりすることのできないよう、主張できる権利のことです。身近な例を挙げると、ご自身が写った写真を勝手にSNSに投稿されたくない時には、肖像権を主張して投稿を取り下げてもらうことができます。特に被写体が人物の写真素材をご利用いただく際に気を付けたい権利です。ストックフォトの場合、肖像権利用同意書(モデルリリース)を取得していることが多いです。人物が映っているのに、モデルリリースが取得されていると明記されていない場合、被写体の肖像権の利用許可が取れていない可能性があるので、注意が必要となります。

商標権

商標権とは、商品・サービスについて登録された商標を、排他的に使用するための権利です。特許庁に申請・登録されたロゴやマークに対して発生し、ブランド保護のための権利にあたります。ストックフォトに商標が写り込んでいた場合は、利用形態や用途によって、商標権の権利者への確認が必要となります。ただし、全てのロゴ・マークに対して商標権が発生するわけではありません。それでも、「大丈夫かな?」と思ったら、素材を使用する前に確認することが大切です。

ストックフォトライセンスの種類

ストックフォトとして販売されている素材にも権利があることをご理解いただけたと思います。
それでは、素材を買う、というのは、何に対してお金を支払っているかご存じでしょうか?
前述したように、著作権は基本的に素材提供者に帰属していますので、著作権を購入しているわけではありません。利用規約に基づいて素材を使用できる「使用権」をご購入いただいています。
この「使用権」の販売形態のことをライセンスと呼びますが、ストックフォトには大きく2種類のライセンスあります。

ロイヤリティフリー(RF)

利用規約の範囲内で、何度でも、複数の用途にご利用いただくことができるライセンスです。利用ごとに追加費用も発生しないため、コストを抑えて利用することができます。ちなみに、PIXTAで販売している素材は、すべてRFです。

ライツマネージド(RM)

使用期間やサイズ、用途に応じて費用が異なり、利用ごとに使用料の支払いが必要となるライセンスです。コストはかかりますが、ご自身が使いたい素材を、同業他社が利用しないように制限をかけることもできます。
このようにストックフォトにも種類があるので、目的や用途に合わせて選んでみてはいかがでしょうか。

「フリー素材」とは何か

RF素材は、ロイヤリティ「フリー」とついているために、よく「フリー素材」と一括りにされることがあります。RFの場合は、1回の使用料を支払うだけで、規約の範囲内であれば何度でも使用できる、という意味です。無料素材のことを、費用がかからない素材ということでフリー素材と呼ぶこともあります。つまり、フリー素材といっても何がフリーなのか異なるので、トラブルを避けるためにも、使用前に利用規約をしっかりと確認しておくことが大切です。皆様がお使いの「フリー素材」は、何が「フリー」かご確認いただいていますか?

まとめ

インターネットの普及・発展に比例して、画像素材はどんどん簡単に取得・利用できるようになってきています。数年前まではデザイン制作会社からのお問い合わせがほとんどでしたが、最近は営業資料や研究開発など、デザイナー以外にも様々な業界で幅広い用途にご利用いただくようになりました。「権利侵害や規約違反の防止をしたい」というお問合せをいただくこともあり、ご要望に応じてカスタマイズプランをご提案する機会も増えてまいりました。誰でも使えるからこそ、トラブルも起こりやすくなってきているという意識が、高まってきているのではないかと思います。権利のことやライセンスのことを知って意識することで、トラブルを避けて安心して制作活動にストックフォトをご活用いただければと思います。

(執筆者)
ピクスタ株式会社 PIXTA事業本部 カスタマーサクセス部
野口 亨子
PIXTA:https://pixta.jp/
法人向け相談窓口:https://pixta.jp/contacts/business

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