情報の森コラム

ご当地レトルトカレー・パッケージデザイン考 10)乗り物系

[特産品/地域活性化] 2018.11.30

世の中にはいろいろな分野にファンやマニア、コレクターがいるものです。深めていけばいくほど、その関心はニッチになり(そうもしないと切りがないという事情もあってか?)、乗り物の中でも鉄道ファンは、乗り鉄、撮り鉄、録り鉄、食べ鉄、スジ鉄(時刻表が愛読書)などなど専門分野が多様とききます。それは、旅をする、写真を撮る、音を聴く、食を楽しむ、というそれぞれの興味との組み合わせなのかもしれません。筆者は、旅×カレー×パッケージで、ご当地レトルトカレーにはまっています。
ということで、今回は乗り物をフューチャーしたご当地レトルトカレーのあれこれです。

*商品名の次はパッケージ裏面に表示されている販売者名または製造者名です。(法人格省略)
*参考価格は、時期、場所で異なる場合があるので、ご承知おきください。(特に記載がない場合、税込み価格)

■陸路の乗り物
九州を走るクルーズトレイン「ななつ星」をはじめ、利用する列車のデザインや装備、サービスなどは、鉄道ファンでなくとも旅の楽しみの一つですね。乗ること自体が旅の目的になることもあります。乗っていれば時間通りに目的地に着く、車窓を楽しむ、お酒が飲めるのも鉄道旅の魅力。一方自動車は、自動運転やカーシェアなどテクノロジーやサービスの進展で大きな変革期を迎えています。さて、ご当地レトルトカレーに登場する列車や自動車を見てみると「往年の名車」が多いようです。

◆千葉
キハカレー ビーフ/ポーク
いすみ鉄道(千葉県大多喜町)
参考価格:各520円 ※当商品は在庫のみの販売となります

鉄道ファンならすぐわかる「キハ」。キ=気動車(ディーゼルカー)、イ=旧一等車、ロ=旧二等車(現在のグリーン車)、ハ=旧三等車(現在の普通車)。ビーフのキハ28形と、ポークのキハ52形と同系列のディーゼルカーは電化前の千葉県内を走っていたとのこと(裏面に詳しい説明あり)。50年以上前に製造された車両なので、カレーも昭和の頃の懐かしい味です。

◆群馬/栃木
わたらせ渓谷鐵道カレー
フリーデン(神奈川県平塚市)
参考価格:500円

足尾銅山の銅を運搬するために足尾鐵道(桐生-足尾)が開通し、その後国鉄~JR足尾線を経て、引き継いだのが「わ鐵(わてつ)」の愛称で親しまれている第三セクターの“わたらせ渓谷鐵道”です。開放感のあるトロッコ列車が人気、筆者も乗りました。このカレーは、駅弁「やまと豚弁当」の豚肉を提供している企業との提携で生まれたとのこと。中に絵葉書が1枚入っていて旅情を誘います。

◆石川
博物館カレー
日本自動車博物館(石川県小松市)
参考価格:540円

1978年に富山県で開館し、その後石川県小松市に移転した日本自動車博物館には、約500台の名車が「使用可能な状態で」展示されています。日本の各自動車メーカーの歩みを見渡せるのが特徴とか。創立当時からオーナー自ら手作りしていたというカレー。パッケージにはロールスロイス。某自動車メーカーの博物館でも「往年の名車」パッケージのレトルトカレーが出ていますが、バリエーションが多いのでお財布と相談・・・

◆岡山
そうじゃ消防署カレー
そうじゃ地食べ公社(岡山県総社市)
参考価格:500円

働く自動車もパッケージの前面に!博物館に並んでいそうなボンネット式の消防車の、やや色あせた写真が目を引きます。ナンバープレートの漢字が「岡」一文字、時代を感じさせます。そうじゃ特産商品シリーズ第1弾として開発された、そうじゃ消防署カレーは「約40年前、夜勤の消防士たちが編み出したオリジナルカレー」(裏面の説明)、「現在まで受け継がれて」きているそうです。

◆新潟
バスセンターのカレー
新潟交通商事(新潟県新潟市)
参考価格:540円

パッケージに乗り物が載っていないではないか!というご指摘があるのを承知でご紹介します。地元の人にはなじみ深い、万代シティ・バスセンターにある立ち食いそば屋の名物カレー。「昔懐かし黄色いカレー」で、全国ネットのご当地紹介番組でも取り上げられました。これを食べるためにバスセンターにやって来る方もいるそうです。レトルトカレーは大き目の箱に1.5人前。

商品開発のテーマやモチーフに合わせて、カレーも「昭和の味」「懐かしの味」といったものが並びました。カレーの味そのものが長く続いているものもあります。バスセンターのカレーはいわば名店系の一種。名店系にはカレー専門店がレトルトとして発売しているものの他、ホテル系、レストラン系、食堂系(社員食堂や自衛隊など本来限られた人たちに向けたものも)などなど多種多様で、大手メーカーも多数商品化しています。

■海の乗り物、空の乗り物
大型船や飛行機がドドンとパッケージに登場するレトルトカレーの代表格は、海自カレー、空自カレー、基地カレーなど自衛隊モノや海軍カレーといったミリタリー系。ですが、今回は対象としません。ミリタリー系は、あまりに数が多いので(呉海自カレーだけで30種類!)、いずれ別の観点で個別にご紹介することにします。

◆神奈川
JMETS 練習船カレー
ヤチヨ(神奈川県横須賀市)
参考価格:500円

独立行政法人海技教育機構(JMETS)の練習船、日本丸と海王丸(いずれも帆船、パッケージは日本丸)で出されるカレーの味を再現。JMETSは、横浜に本部をおく日本最大の船員教育訓練機関で、このカレーは売上の一部が船員教育の充実に充てられるとのこと。練習船での訓練初日はカレーを食べるそうです。パッケージ右上は汽船の青雲丸。カレーのパッケージを通していろいろなことを知るのも楽しみの一つです。

◆神奈川
氷川丸 ビーフカレー、氷川丸 ドライカレー(辛口)
郵船ナブテック(神奈川県横浜市)
参考価格:640円(ビーフカレー)、820円(ドライカレー二人前)

横浜の馬車道駅近くの日本郵船歴史博物館のミュージアムショップで見つけました。1930年に就航した豪華客船・氷川丸(重要文化財!)は、博物館から歩いて15分ほどの山下公園近くにあり、船内の見学もできます。ビーフカレー、ドライカレーどちらも氷川丸で供されていた味を再現したもの。パッケージのイラストは、アール・デコを代表するフランス人デザイナー、カッサンドルのポスターにも通じるダイナミックさを感じさせます。

◆茨城
土浦ツェッペリンカレー
土浦商工会議所(茨城県土浦市)
参考価格:540円

「カレーのまち つちうら」では、毎年秋に土浦カレーフェスティバルを開催、出店したご当地カレーを対象に「C-1グランプリ」も選出。さて、飛行船ツェッペリンと土浦の関係、気になりますよね。1929年に世界一周を成し遂げたツェッペリン伯号が最初に降り立ったのが当時の霞ケ浦海軍航空隊で、乗組員にカレーを振舞ったとの話も(裏面説明の受け売り)。このカレーには特産のれんこん、ブランド豚が使われています。

◆宇宙
スペースカレー
ハウス食品(大阪府東大阪市)
参考価格:540円

ご当地カレーは日本、ましてや地球ばかりとは限らない。ロゴが銀色に光るパッケージには、国際宇宙ステーション「きぼう」の写真、右には宇宙日本食のマーク。JAXAと共同開発し、2007年に認証されたカレーです(日本科学未来館のショップで発見)。裏面には「地上での作り方」を記載(普通のレトルトカレーと同じでした)。無重力空間では、お湯で温めずに専用の加熱トレーを使うそうです。カレーの他にも宇宙日本食認定はいろいろあり、JAXAのサイトで紹介されています。
>>> http://iss.jaxa.jp/spacefood/about/japanese/

乗り物に乗って旅に出て、道中も楽しみながら、旅先では美味しいものに出会う、その土地の文化や歴史、自然に触れる。ご当地レトルトカレーもそんな楽しみの中のひとつ。これまでにも書いてきましたように、その土地にゆかりの人やものを題材に、新たなご当地レトルトカレーを開発する例も多くみられます。「ご当地レトルトカレー探索の旅」は、まだまだ続きます。

■TOPICS
2018年11月10日~11日の2日間、土浦カレーフェスティバル2018が、茨城県土浦市の川口運動公園陸上競技場で開催されました。2007年から毎年開催され、今年で12回目。来場者の人気投票で決まる土浦C-1グランプリでは、45メニューの中からグランプリ、準グランプリ、第3位を決定、地元土浦のお店が独占しました。前週の11月3日~4日は、神田カレーグランプリが東京神田の小川広場で開催されていました。神田に土浦にとカレーファンには忙しい11月でした。

(記:中越 出)

ページの先頭へ