デザインの権利と保護

Vol.131〈改訂版デザイン保護ハンドブック〉解説セミナー 開催

2023.8.28

デザイン保護委員会では、2023年3月末に「デザイン保護ハンドブック」の改訂版を作成しました。
このハンドブックは、制作したデザインが他者から侵害を受けないように、また他者の権利を侵害することの無いように、パッケージデザインに係る様々な立場の方々に向けて、デザインを取り巻く諸権利を知り、トラブルを生まないよう安心して業務を進められるよう基本的なポイントを押さえた内容になっています。


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今回このハンドブックをテキストにした解説セミナーを実施しました。コロナ禍では知財関係のセミナーもオンラインの開催でしたが、今回のセミナーはオンラインとリアルが選べる形で企画し、会場で8名、Zoomで27名、合計35名の方にご参加いただきました。

そのデザイン、大丈夫ですか?〈改訂版 デザイン保護ハンドブック〉解説セミナー

日程:2023年6月30日(金)
時間:15:00 〜17:00
参加方法:会場で参加またはZoomで参加
講師:永芳太郎 弁理士(みずの永芳特許事務所 所長)
会場:東洋インキ株式会社 大会議室

永芳太郎弁理士には、ハンドブックの原稿作成・セミナーの講師、ホームページへの寄稿とご尽力いただきましたことを、この場を借りてお礼申し上げます。ありがとうございました。(デザイン保護委員会 委員長/徳岡 健)

◆このページに限らずVol.1~これまでに掲載した内容は著作権・他で保護されています。
無断転用はお断りいたします。引用の場合は引用部分を明確にし、出所の明示をお願いいたします。

改訂版「デザイン保護ハンドブック」解説セミナーのご報告

みずの永芳特許事務所
所長・弁理士 永芳 太郎

「そのデザイン大丈夫ですか」と題して2023年6月30日に行われた、改訂版「デザイン保護ハンドブック」解説セミナーの概要をご報告します。
「デザイン保護ハンドブック」は、2010年にいつでも携帯できる手帳サイズで発行され、2015年に大判・カラー化して情報量を増やした改訂版が発行されていました。
その後の法律改正や料金改正などを反映させると共に内容を充実させて、本年(2023年)3月に改訂版が作成され、電子版のハンドブックとしてJPDAホームページの会員専用ページ( https://www.jpda.or.jp/members/ )で公開されています。

解説セミナーでは、この改訂版の概要について、掲載された法改正の内容や、デザイン制作、業務契約における注意点を中心に紹介しました。

保護ハンドブックの概要

「デザイン保護ハンドブック」には、
□ 創作したデザインを模倣、盗用から守るために、また、他人の権利を侵害しないように知っておくべき権利、規制法それぞれの概要や注意点
□ デザイン業務契約時の注意点と契約書のサンプル
□ デザイン制作に際して注意すべきデザイン素材(ロゴ、写真、イラストなど)のチェックポイントなどがまとめられています。

また、巻末にテーマごとの目次がある、JPDAホームページに掲載されているデザイン保護委員会のレポート「デザインの権利と保護」( https://library.jpda.or.jp/rights_protection/ )には、各テーマについて専門家の寄稿も含めて詳しい解説がありますので、ぜひ参照してください。

意匠法 保護対象の拡充

2020年4月に施行された改正意匠法では、物品を離れた画像のみの意匠(アイコンの意匠など)や、土地に定着した不動産である建築物の外観や内装の意匠、が新たな保護対象として加わっています。

商標法 新たなタイプの商標

2015年4月から、新たなタイプの商標として、
ア)時間の経過に伴って変化する「動きの商標」
イ)見る角度によって変化する「ホログラム商標」
ウ)単色又は色彩の組合せからなる「色彩のみからなる商標」
エ)聴覚で認識される「音商標」
オ)文字・図形等を付す位置が特定された「位置商標」
の出願の受付が始まりました。

キャッチフレーズの商標登録

「標語(例えば、キャッチフレーズ)は、原則として、商標法第3条第1項第6号(自他商品識別力がないもの)に該当する」、という商標審査基準の規定が、2016年の改正で見直されました。
「宣伝広告又は企業理念・経営方針等を普通に用いられる方法で表示したものとしてのみ認識させる場合」、は従来同様に登録が認められませんが、「宣伝広告又は企業理念・経営方針等のみならず、造語等としても認識できる場合には、第3条第1項第6号の拒絶理由に該当しないと判断する。」とされましたので、登録状況に注意する必要があります。

著作権の注意点

従来、原則として著作者の死後50年であった著作権の保護期間は、2018年12月30日以降、原則として死後70年に延長されています。
なお、デザインの素材となるイラスト、写真など著作物の利用、譲渡契約においていくつか注意すべき点があります。

□ 同一性保持権について

まず、著作者の人格的利益を保護する「著作者人格権」(公表権、氏名表示権、同一性保持権)は、著作者のみに認められる権利で、例えば契約書に「全ての著作権を譲渡する。」と記載しても、譲渡の対象になりません。
著作物をそのまま利用するのではなく変更を加える場合には、同一性保持権を有する著作者の許諾を得ることが必要です。

□翻案権について

次に、イラストをぬいぐるみにするなど、形を変えた二次的著作物を創作する権利(翻案権など)も、「全ての著作権を譲渡する。」と記載しただけでは譲渡の対象にならず、契約書に「著作権法第27条、同第28条に定める権利を含む」旨が明記されている必要があります。

デザイン素材についての注意点

イラスト、写真など著作物について、許諾を得ない不正使用や、契約、許諾内容の誤解などから、デザインや商品の公表後に問題が生じている例があります。
「デザイン保護ハンドブック」には、各種権利の内容を把握すると共に、デザイン制作において支給されるデザイン素材や自ら選択使用する素材について、利用許諾の有無や権利関係の確認をすることで問題を回避するために、「デザイン素材のチェックポイント」表が掲載されています。

「そのデザイン 大丈夫ですか?」

デザインを取り巻く諸権利を把握して、トラブルなく業務を進めるために「デザイン保護ハンドブック」を活用してください。

デザイン保護ハンドブック解説セミナー ~参加者アンケート結果報告~

このたび開催した【改訂版デザイン保護ハンドブック】解説セミナーは参加方法を会場参加とZOOM参加の併用で開催し、おかげさまで合わせて35名の方にご参加いただくことができました。セミナー終了後は、参加者の皆さまにセミナーを受けられた感想についてアンケートを行いましたので集計結果をご報告いたします。(デザイン保護委員会/齋藤 郁夫)

セミナーはZOOMから27名、会場から8名の方が参加されました。そのうち、アンケートにはZOOMから16名、会場参加から8名の方に回答をいただきました。参加者の内訳では、インハウス、個人事務所のデザイナーが8割ほどを占めましたが、中には物流会社や印刷会社、広告代理店からの参加もありました。業務経験の年数では10年以上のベテランの方が4割、5年以上10年未満の中堅の方が1割強、残りの約半分が5年未満の方、といったように経験年度に偏りなく広くご参加いただきました。
デザイン保護委員会ではこれまでに複数回のセミナーを開催してきましたが、今回のセミナーでは初参加の方が8割を占めています。
セミナーはWebと会場参加の併用で行いましたが、「次回開催するとしたらどちらで参加したいですか」との質問には「リモートで参加」「会場で参加」が半々に分かれました。会場参加はその場でリアルに質問できる良さがありますが、仕事の事情で移動時間を取れないこともありますので、今後もできる限りWebと会場参加の併用をしていきたいと思います。

「デザイン保護ハンドブック」の旧バージョンは印刷された手帳サイズの初版を2010年、改訂版(大判・カラー)を2015年に発行していますが、冊子タイプのものを持っている方が3割いらっしゃいました。ただ残念ながらあまり利用はされていなかったようす。
今回のデジタル版についてはおおむね良好なご評価がいただけました。Web版は使い勝手を重視して各所に工夫を凝らしていますのでこれを機に一層多くの方にお役立ていただけるよう願っております。

Web版のコンテンツは知的財産権から始まり、産業財産権、著作権から契約書、注意すべきチェックポイントまで多岐に渡りますが、どの項目もまんべんなくお役立ていただけそうな結果が得られました。
今回のセミナーを受けての感想では、「とても役立った」「役立った」を合わせると9割を超えており難易度についての質問でも「とても分かりやすかった」「分かりやすかった」を合わせて約9割の方にご評価いただき、デザイン保護ハンドブックの改定を企画した私たちにとっても大変嬉しい結果でした。
セミナーの開始時間は、なるべく多くの方に受講いただけるよう当委員会メンバーで議論を重ねた結果、15時からとしましたが、ほぼ皆さまからちょうどよい、との回答がいただけてホッとしております。

また、今後のセミナーを企画するための参考として、取り上げてほしいテーマについてお聞きしたところ、下記のグラフのように広い範囲でご回答をいただきました。なかでも海外の知財に対する回答が多く、昨今のデザイン業務が日本の中に留まらずグローバルに展開されていることを窺い知ることができました。


最後に、寄せられた自由意見をご紹介してご報告のまとめとさせていただきます。長時間のセミナーの後にも関わらず、アンケートにご協力いただきありがとうございました

<以下自由意見から>
●とても役に立った。守られる側でなく、法を犯してしまう側になる可能性もあるかと思い、知っていてよい情報をたくさん聞けました。
●とても分かりやすかった。これからの活動の参考にしたい
●実例が記載されており分かりやすかった
●説明が分かりやすかったためハンドブックの内容もよく理解できた
●今回基礎がきけたので次は知的財産の応用を聞きたい
●海外の知財にどのようなものがあるか知りたい
●デザイナーとして権利関係のお話を聞けたのが初めてでしたのでとても役に立ちました
●デザイン保護ハンドブックをクライアントさんにも紹介したい
●デザイナーとして働き始めたばかりなので、今日のセミナーを受けて意識することが増えました。
●難しさも感じましたが、実際の例を紹介していただきながらだったので理解しやすかったです”
●ありがとうございました。今後に役立てます。

(デザイン保護委員会:稲垣、大谷、齋藤、高田、高林、竹内、徳岡、山本)

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