情報の森コラム

調査・体験日記② 1から考えるやさしいデザイン アメリカ・イリノイ編 <PART2>

[やさしいパッケージ分科会] 2023.7.13

今回は、前回に引き続きアメリカのイリノイ州在住の菅木綿子さんに様々な“やさしいデザイン”ついてお話しいただいたPART2です。

<菅木綿子さん>
国内大手印刷会社、食品メーカーに勤務し商品のデザインに携わった後、インドネシアを経て現在はアメリカ(イリノイ州)在住。日本とは異なる現地のパッケージデザインの様子をSNS等で発信している。日本包装技術協会、包装管理士。日本官能評価学会、官能評価士。著書「パッケージデザインを学ぶ 基礎知識から実践まで」

やさしいパッケージ分科会では、社会課題・環境問題・ユニバーサルデザインといった「さまざまな課題を解決するデザイン」を、「社会に・環境に・人にやさしいデザイン」と総称し、その中からJPDAとして取り組むテーマを絞るべく現在は情報収集・取材・体験等を行っています。

■「◯◯-Owned(オウンド)」?

日本ではあまり見かけない「◯◯-Owned」の表記についてお話してくださいました。「◯◯-Owned」とは、そのブランドや企業を誰が立ち上げ製品を開発したか、つまり誰がオーナーなのかを示すもので、パッケージやブランドのホームページなどに表記されています。◯◯にはそれぞれのアイデンティティーを表す言葉が入り、「これが私たちの製品です」と当事者として社会にアプローチをし、同じアイデンティティーや思想を持つ人々が購入し支援する形です。一例として、老舗の大手絆創膏ブランドが有色人種向けの絆創膏を発売した際には手のひらを返したようだと反感を買いましたが、有色人種の家族が自ら開発し「Black-Owned」「Family-Owned」を掲げ発売した絆創膏は受け入れられ支持される、といったことがあったそうです。

企業が消費者に一方的に製品を与えるのではなく、同じアイデンティティーや思想を持つ者同士が手を取り合うという、製品そのものよりもブランドや製品開発の背景が重視されることに、多民族国家の歴史の重さを感じました。

◯◯-Ownedには他にも様々なものがあります。




■多言語、多文化、ハラルやヴィーガンなどの思想について

多様な人々が暮らす多民族国家において、文化や思想への対応もごく当たり前に普及されているとのことでした。またハラルフードの他にも、コーシャフードと呼ばれるユダヤ教徒が食べられる食品なども多く扱われているとのことでした。



■菅さんのお話を伺って

海外に住む菅さんの広い知識と現地の観察に基づいたお話を伺い、「やさしさ」の方針や定義が、国や環境、背景によって大きく異なることを学びました。また海外での正解が日本でも正解とは限らず、逆も然りで、開発側にいる私たちは安易に耳あたりの良い言葉に引っ張られず、誰が何に対して提供する「配慮」や「やさしさ」なのか、本質とアプローチの方法を考えていきたいと襟を正す機会となりました。国内のメンバーだけでは見えなかったことを伺い議論することができ、大変有意義な時間でした。
(以上)
(調査研究委員会:小林絵美[記]、齋藤郁夫、鈴木樹子、福本佐登美、丸本彰一、三原美奈子)

1から考えるやさしいデザイン アメリカ・イリノイ編 <PART1> はこちら
https://library.jpda.or.jp/pd_forest/column/3805.html/

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