Vol.113「事例で学ぶ、ストックフォト素材使用の落とし穴」
本稿は、2019年2月7日に当委員会が実施しました<ストック素材を安全に利用するための実践講座>で、講師をお引き受けいただいた著者に、講義の背景をお話し頂きます。セミナーに参加された方々へはQ&Aの補足説明となり、参加いただけなかった皆様には紙上セミナーとして実践的な知識をお届けします。
デザインに関わる私たちにとって、端的で理解しやすい知財書となります。ぜひお読みいただければと存じます。
※上記Q&Aは、Vol.111でご覧いただけます。
>>> Vol.111 「セミナー報告/ストック素材を安全に利用するための実践講座」
なお、■活動報告では「<パッケージの類似についてを考える>9月セミナー」の予告があります。
(2019年6月13日 編集・文責:デザイン保護委員会 担当 丸山 和子)
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情報発信
事例で学ぶ、ストックフォト素材使用の落とし穴
株式会社アマナ 執行役員 佐々木 孝行
AGENDA
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1. 広告業界を取り巻く環境の変化
2. 写真は多くのグレーゾーンを含んでいる
3. ストックフォト素材に関連した契約
4. ライセンスの種類と特徴
5. 撮影用のカンプにストックフォトを使うリスク
6. 人物写真利用のリスク
7. 実は最もクレームが多い、建物写真使用のリスク
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1.広告業界を取り巻く環境の変化
私が広告業界で仕事をするようになって、かれこれ25年近く経ちますが、当時の宣伝や企業コミュニケーションの中心には、ポスターや雑誌広告などの紙媒体が健在の時代でした。
仮にそこで何らかの問題が発生したとしても、その範囲は比較的限定的で、その媒体を見た人、その媒体を制作した人、言い換えれば「関係者」の中だけでコトを収めることができた時代です。
ですが、現代はどうでしょう。世界中の人々のコミュニケーションはインターネット上のWEBサイトに置き換わり、SNSを活用して一個人が自由に情報発信できる時代となりました。
ひとたび情報の発信の仕方や表現をしくじれば、その情報はたちまち拡散し、情報を求めていない人にすら勝手に送りつけられる世の中です。言うなれば、関係者不在の中で、コトがどんどん拡大し、もはや取り返しがつかない状況にまでいってしまう実に油断できない環境です。
一方で、国としてはジャパン・コンテンツの輸出を積極的に後押ししていることもあり、長い間ぼんやりとしていた権利の顕在化についても様々な取り組みが実施されています。
2015年4月の商標法改定もその一例で、これまで認められてこなかった「色彩」「音」「動き」などの5つの要素が新たに商標として認められることになりました。久光製薬の「ヒ・サ・ミ・ツ」の音声や、大正製薬の「ファイトー、イッパーツ」の掛け声などが認定されたのもこの年です。
このような権利の顕在化は、長年に渡ってブランドを育て上げてきた企業にとって大変喜ばしいことです。ですが、他の企業にとっては、新たな「地雷」として権利社会の土中に埋まっていくことになります。日頃からこの手のニュース情報には積極的に耳を傾けていく必要がありそうです。
さて、この寄稿では、ますます進行する権利社会において、日頃会員のみなさんも利用することの多いストックフォト素材を例に、「写真」を安全にビジネス活用するためのポイントを解説したいと思います。
2.写真は多くのグレーゾーンを含んでいる
皆さんもよくご存知の「渋谷スクランブル交差点」のスナップ写真を思い浮かべてください。
手前にはたくさんの行き交う人々。
ビルの上にはたくさんの商業看板。
そして遠くにはあの有名な109のビルが写っています。
これらたくさんの要素が写り込んでいる写真を、ある商品のメインビジュアルとしてポスターやパッケージデザインに使用することになったとします。
法的な観点で見た場合、この写真はどこまでの権利処理が必要でしょうか。
答えは「何も必要ない」です。
理由は、あくまでも渋谷のスクランブル交差点を端的に写したスナップ写真であって、誰にも、どこにも、実質的な迷惑や損害を与えているとは考えられない写真だからです。この写真を背景に、手前に商品カットを合成してポスターを作ったとしても、撮影したカメラマンの許可さえあれば法的には何ら問題がないと私は思います。
ですが、それはあくまでも渋谷のスクランブル交差点全体を写した写真だからであって、もし遠くに写っている109ビルの部分を大きく引き伸ばして使ったらどうなるでしょうか。
もはやその写真は「渋谷駅前の風景写真」ではなく、「109ビルの写真」です。このような特定の企業を想起させる写真に、別な企業の商品カットを合成してポスターを作ってしまうと、「フリーライド」と呼ばれる違法性が生じる可能性があるのです。
*フリーライド。
《「ただ乗り」の意》他社が築き上げた信用と名声に便乗して利益を得ようとする行為。有名ブランド名をまねた店舗名をつけるなど。
出典:小学館/デジタル大辞泉
では、どこからどこまでが「渋谷駅前の風景写真」で、どこからが「109ビルの写真」なのでしょうか。残念ながら明確なガイドラインは存在しません。これこそが写真の持つ不気味さであり怖さなのです。
もう一つの怖さとしては「クレーム」の問題があります。
クレームは法律とは全く関係のないレイヤーで発生します。
このような写真で想定されるクレームとしては、
①写り込んでいる人物からのクレーム
②商業ビルからのクレーム
③看板や大型ポスターに関連したクレーム
などが考えられます。
もし、今後何らかのトラブルが発生してしまった場合は、ぜひ落ち着いて「法的な観点」と「クレームの観点」この二つを分けて検討し、適切な対処をすることをお勧めします。
3.ストックフォト素材に関連した契約
ここからは具体的なストックフォトの利用方法についてお話していきます。
そもそも当社のような写真販売会社は、どのような契約に基づいて写真画像を商材として流通させているのでしょうか。
写真画像の入手元は大きく分けて二つあります。
一つはプロの写真家やクリエーターからの調達。もう一つは専門的な写真を膨大に所有管理している通信社や美術館などの企業や団体です。
最近では素人のカメラマンが自ら投稿する方法で写真の販売できる、プラットフォーム型の写真提供会社も増えてきました。
このような画像提供者と販売会社との間では「著作物に関する預託契約書」を取り交わすのが一般的です。一方、販売会社と皆さんのような利用者との間では、「著作物の使用契約」を結んでご利用いただくことになります。
デジタル画像であっても誰かの著作物であることは変わりません。著作権法に加えて、提供会社が定めるルールを守って使用しなくてはいけないのです。
ストックフォト素材の多くは、提供会社が運営するWEBサイトを通じて画像をダウンロードするかたちで提供されています。ダウンロードの際には、必ず「利用規約への同意」を求めてくるはずです。
皆さんは各サイトの利用規約をしっかりと読んだことはあるでしょうか?この規約への同意イコール「著作物の使用契約」の締結ということになりますから、面倒でもその内容を理解しておくことは大変重要です。
利用規約の内容は提供会社によってバラバラですが、ほぼ共通している免責事項が存在します。
それは、「キャプション、キーワードなど文字情報の正確性については一切保証しない」というものです。これを聞くと驚かれる方も多いと思いますが、衝撃の事実です。
理由はいくつかありますが、最大の理由は日々送られてくる膨大な写真画像に関して、写っている要素を全て目視で確認し、なおかつ内容が正しいかどうかを精査することが物理的に困難なことが挙げられます。また、専門的・学術的な知見が必要とされる画像も数多く存在するため、とても確認しきれないという理由もあります。
提供サイトでの文字情報は、あくまでも検索でヒットさせるための「タグ」として位置付けられているのです。
とくにパッケージデザインにおいては、そこに写っている被写体との整合性が強く求められます。画像提供サイトに記載されている情報が本当に正しいのか、必ず皆さんとしても確認をしてください。仮に間違っていたとしても契約上は「免責」ですから、提供会社に賠償を求めることはできません。ぜひともご注意いただきたいポイントです。
先ほども少し触れたように、最近ではアマチュアカメラマンによる投稿画像もかなり多く流通しています。このような「投稿型の写真販売サイト」では、文字情報の入力も投稿者本人が行いますから、はたしてどれほど正しい情報が入力されているかは、かなり疑問を感じます。
4.ライセンスの種類と特徴
次にストックフォト素材のライセンスの違いについて解説します。
ストックフォトのライセンスは大きく分けて二つあります。一つはRF(ロイヤリティフリー)もう一つはRM(ライツマネージド)です。
*RF ロイヤリティフリー
一度の購入で何度でも、基本何にでも無期限で使用できるライセンス。
使用の目的によっては追加料金(以下、「エクストラ・ライセンス」)が発生する場合がある。使用履歴の管理は一切されていないので、他社とのバッティングを回避することはできない。
*RM ライツマネージド
使用条件(使用する媒体・期間・大きさ等)に基づき積算式に料金が決まるライセンス。使用履歴が管理されている関係で、使用期間を申告しなくてはいけない。
最近ではコストコンシャスなRFが主流となっていますが、専門性の高い写真の多くは今でもRMライセンスの場合が多いです。RMライセンスで一番注意しなくてはいけないのは「使用期間」です。1年間の使用が基本になっていますが、購入の段階であらかじめ使用期間を申請し、それを守らなくていけません。
商品パッケージなど長期間での使用が明らかな場合は、コスト面からRFの選択もあり得ます。しかしながら競合他社とのバッティングを考えると、RMもしくは、新規で撮影を行う方法が良いように思います。
履歴が管理されているRMですが、競合他者とのバッティングの回避は必ずしも万全ではありません。実は履歴の管理レベルの違いにより、さらに二つに分類されます。
EX(エクスクルーシブ)とNE(ノンエクスクルーシブ)です。
*EX エクスクルーシブ
提供会社が1社だけの独占取り扱い写真
*NE ノンエクスクルーシブ
複数の提供会社が、全く同じ写真をそれぞれ独自に取り扱っている場合
したがって、競合他社とのバッティングを完全に回避できる可能性があるのは、EXだけということになります(注:別途特別な手続きが必要です)。
一方、期間の概念もなく、自由に使用ができるRFですが、当然禁止されている事項もあります。それは「第三者間での使い回し」です。
これはAdobe社のCSなどグラフィック系のパッケージソフトと同様の考え方で、「購入者1人に対して1ライセンス」が原則となります。
したがって、共有サーバーなどに写真素材を格納して、同じ部内のメンバーで使い回す行為はライセンス違反となり、そのような使用を希望する場合は、別途、「エクストラ・ライセンス」(拡張ライセンスとも呼ばれています)の契約が必要となりますから注意してください。
このエクストラ・ライセンスですが、提供会社ごとに微妙に考え方が異なりますから、ぜひ一度利用している提供会社のライセンスルールを確認してみてください。
5.撮影用のカンプにストックフォトを使うリスク
皆さんの中にも新規での撮影をご経験された方がいらっしゃると思います。撮影を実行するにあたっては、最終的なビジュアルの構図や全体の雰囲気を関係者間で共有するためのカンプ制作が行われるかと思います。
事前の企画検討段階でもかなり精度の高いカンプが必要になるわけですが、この制作にウォーターマーク(透かし文字)を画像処理で消したプレビュー用のストックフォト素材を利用するケースが多いのではないでしょうか。
そもそも、このようなカンプや企画書の作成にストックフォト素材を使用する行為に問題はないのでしょうか。実は提供会社が定める利用規約に則れば、これもNG行為となります。
提供会社が認める「カンプ使用」というのは、「その素材そのものを購入するかどうかを検討するため」のアタリとしての使用を意味しており、最終的に素材購入に結びつかない「撮影用のカンプ制作」に利用することは認めていません。
大手の広告代理店などは、これによるいわば「不正な使用」を防止するために、提供会社と特別な包括契約を結んでいるケースも存在します。
このような使用は、長年にわたる業界の慣行となっているのと、関係者だけが共有するドメスティックな資料内で行われることもあり、あまり大きな声では言えませんが提供会社もほぼ容認しているのが実情です。
ですが、このような行為は、ネット上に溢れる他人の著作物を、何の罪悪感もなく無断で利用してしまう「バレなきゃ大丈夫文化」を醸成することにもつながる恐れがありますから、リスクマネジメント上も決して好ましいことではありません。
さらに撮影用のカンプにストックフォト素材を使用するもう一つの大きなリスクとして、「パクリ」の問題があります。
これまで何度か述べてきた通り、ストックフォト素材はれっきとした、個人もしくは法人の著作物です。。
この他人の著作物であるビジュアル作品の、独創的な表現方法や構図を、そっくりそのまま頂戴してしまう行為はかなり危険な行為です。
私もこれまで何度かこの類のトラブルを見聞きし、経験もしてきましたが、発端のほとんどは、オリジナルの作者からの通報によるものです。。
作品の作者は、自分が作った作品の構図や独自の表現に大変な思い入れがあるものです。著作権者が欧米在住だった場合などは、著作権侵害による賠償金額は相当なものになる可能性がありますから、ぜひ注意をしていただきたいと思います。
ストックフォト素材を撮影用のカンプとして安全に利用するための方法としては、
①そのことを目的として、正式に素材を購入する。
②提供会社とあらかじめ包括的な契約を締結する。
③アートリファレンスサービスを利用する
の三つが考えられます。
①に関しては、まさに文字通りですが、ご自身で購入したストック素材を、ご自身のカンプ制作に利用することは何ら問題ありません。
②に関しては、提供会社の相談窓口に問い合わせを行って、使用する目的の範囲や期間、利用できる人数など必要な取り決めを行って契約を交わす必要があります。
③の「アートリファレンスサービス」ですが、オリジナルの作者に、その作品を翻案することの許可を取得するサービスで、いわば「パクリにならないための事前申請」ということになります。
*参考リンク「アマナイメージズ・アートリファレンスサービス」
https://amanaimages.com/ors/as.aspx
このサービスを利用することで、安心してストックフォト素材とそっくりに撮影することが可能になります。いずれの選択肢もコストがかかる内容ではありますが、他人の著作物の健全な利用という点では必要な経費と捉えるべきでしょう。
6.人物写真利用のリスク
ここからは、写真に写っている「被写体」にポイントを移してお話をしていきたいと思います。まずは人物写真です。ストックフォト素材の中ではダントツにニーズがあるのがこの人物系の素材ですが、モデルやスタジオのコスト、撮影の段取りを考えると、様々なシチュエーションから選べる人物系のストックフォト素材は大変リーズナブルと言えるでしょう。
提供会社で販売されている人物写真のほとんどは、「モデルリリース」と呼ばれる「肖像権使用同意書」をモデル本人と取り交わしている場合が多いです。
この書面は、自分の肖像写真が長い期間にわたって、様々な媒体や様々な場所で利用されることに本人自らが同意したことを示す大変重要な契約書面です(モデルが未成年者の場合は、その両親による同意)。
提供サイト上では「モデルリリース:取得されています」などと表示されています。
ですが、提供会社が販売している写真素材の中には、このモデルリリースの取得が物理的に不可能な写真も数多く存在します。わかりやすい例としては、たくさんの人物が写り込んだ観光地のスナップ写真などあげられます。
このような素材写真は「モデルリリース:取得されていません」と表示されています。
販売用に流通しているストックフォト写真は、全て肖像権の処理がなされていると勘違いしている利用者の方が意外に多くいらっしゃいますが、そうではないということをあらためてご案内しておきます。
では、モデルリリースが取得されているストックフォト素材の人物写真であれば、どのような使い方をしても問題ないのでしょうか。これはNOです。
これは、多くの提供サイトの利用規約に記載されている内容なのですが、写真に写っている人物モデルが「不快と感じる可能性がある使用や、公序良俗に反すると思われる使用は禁止」となっており、場合によっては使用の差し止めを要求される可能性がありますからぜひ注意をしてください。
このような使用は「センシティブ使用」と呼ばれており、ストックフォト素材の提供会社の間では以前からトラブルにつながる困った問題として課題視されてきました。
具体的な例としては、
①犯罪・麻薬・暴力に関連した内容
・痴漢防止ポスターのイメージにサラリーマン男性の写真を使用
・危険ドラッグの禁止ポスターに笑顔の青年の写真を使用
・児童虐待をテーマにしたキャンペーンビジュアルに親子の写真を使用
②病気や薬に関連した内容
・メタボリックなイメージに中年男性の写真を使用
・認知症予防のイメージにお年寄りの写真を使用
・重大疾病や性病患者のイメージとして使用
③架空の体験者としての使用
・精力剤の愛飲者として中年男性の写真を使用
・実際には20代の女性モデル写真を40代として広告に掲載
・葬儀会社のホームページなどで遺影イメージとして使用
④特定の宗教・政治に関連した内容
・特定の宗教法人の信者イメージに女性の写真を使用
・特定の政治団体の会報誌の表紙に笑顔の写真を使用
・特定の考え方に賛同もしくは否定する人としての写真使用
⑤風俗店や出会い系サイトなどでのイメージ使用
・風俗店で働くことを検討している女性のイメージとしての使用
・従業員イメージとして若い女性の写真を使用
・婚活サイトの登録者イメージとして男女の写真を使用
などなどです。
使われ方を不快に感じるかどうかは、人それぞれの感じ方によるものなので、なにがセンシティブ使用に該当するのか明確なガイドラインを設けることができません。
ぜひ、クリエイティブワークを進める段階で、表現方法や写真の使い方がこの「センシティブ使用」に該当していないか、客観的な視点を忘れないようにしたいものです。
7.実は最もクレームが多い、建物写真使用のリスク
最後はタイトルの通り最もトラブルが多い「建物の写真」についてお話しをしましょう。具体的にトラブルが起きる状況としては、特定の建物が写っている写真が企業の広告や商品パッケージに使用され、それを発見した建物の関係者からクレームが入るといったパターンがほとんどです。
そもそも他人が所有する建物を無断で撮影する行為や、その写真を利用する行為に問題はあるのでしょうか。実は著作権法に以下の条文があります。
*著作権法第46条 公開の美術の著作物等の利用
美術の著作物でその原作品が前条第二項に規定する屋外の場所に恒常的に設置されているもの又は建築の著作物は、次に掲げる場合を除き、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。
一 彫刻を増製し、又はその増製物の譲渡により公衆に提供する場合
二 建築の著作物を建築により複製し、又はその複製物の譲渡により公衆に提供する場合
三 前条第二項に規定する屋外の場所に恒常的に設置するために複製する場合
四 専ら美術の著作物の複製物の販売を目的として複製し、又はその複製物を販売する場合
ここでは、屋外に恒常的に設置されている建築の著作物に関して、利用が制限される内容が定められています。これによれば、問題となるのは建築の著作物の複製と公衆への提供のみということになり、写真の撮影や利用については何ら制限を受けないということがわかります。
この条文の解釈に関しては数多くの識者の方々が解説をしてくれていますので、ぜひ皆さんも調べてみてください。多くの建物の管理者からのクレームにはほとんど法的な論拠はないということがご理解いただけると思います。
配慮をしなくてはいけないポイントとして考えられるのは、この記事の前半で述べた「フリーライド」の観点と、レアなケースかと思いますが、建物を画像処理によって破壊したり極端に変形するといった「センシティブ使用」の観点だけだと私は思っています。
ですが、現実には建物の管理者からのクレームは今も後を絶ちません。そのクレームの入る先が制作会社ではなく「広告主」である点も実に厄介です。
全国各地のランドマークとなっている有名な建物や、美術館、神社仏閣からのクレームは業界でも有名です。中には使用料を要求してくるケースもあり、業界内で長い間くすぶっている実に大きな問題です。
クレームを防ぐ方法としては、その建物の管理者に連絡を入れて許可をもらう以外に方法がなく、その結果「やぶ蛇」となり、使用そのものを断念するに至った悲しい事例すら存在します。
法的な観点をベースに、クレームを覚悟の上で堂々と使用するのか
予測不能なクレームを回避するために「やぶ蛇」覚悟で連絡を入れるのか
デザインの現場ではこれまでもたくさんの先輩たちが悩み、議論し、そして判断を下してきた歴史が脈々とあります。何が正解なのかは、その時その時のビジネスの規模や影響の度合いで変わってくると思いますが、「過去の具体的な事例を知ること」がその手助けとなることは間違いありません。ぜひ頼りになるコンテンツパートナーを見つけていただきたいと思います。
この寄稿も会員の皆さんの小さな一助になりましたら幸いです。
(以上)
活動報告
9月にパッケージの類似についての知財セミナーを開催します!
5月17日(金) 2019年度第1回のデザイン保護委員会を実施しました。
今年度の活動を具体的に検討し、議題1では9月に実施するセミナーについて、議題2では2011~2012年に実施した知財塾(全4回)の継承について、議題3ではHPへの委員会レポートVol.113の主テーマとなる寄稿原稿の委員会確認を済ませました。
以下に9月セミナーの予告をお伝えします。(参加者募集のご案内は8月上旬となります。)
テーマ:「パッケージの類似について」(仮)会員に関わりの深い商品群を対象とする方向です。
講 師:交渉中
定 員:60名
会 費:1,000円
会 場:東洋インキ株式会社大会議室(中央区京橋2-2-1 京橋エドグラン内)
※詳細は順次お伝えしていきます。
引き続き、記事へのご質問・ご意見・ご要望等は下記アドレスで受け付けています。
MAIL:info@jpda.or.jp