デザインの権利と保護

Vol.101「第2回 特許庁意匠公報検索〈J-PlatPat〉実習セミナー」

2018.3.21

2016年11月実施の、第1回特許庁公報検索実習セミナーの経験を踏まえて、第2回の実習セミナーの具体的な内容検討を始めたのが2017年6月です。講師には講義内容の組み立ての打ち合わせにご参加いただき、デザイナーが解りやすい検索実習を目指しました。又、当日の効率的な進行のために、検索に必要な知識を事前に当HPから配信し、また検索に必要と思われる「手元資料」も予め作成し、当日を迎えることができました。

前回の「特許庁公報検索〈J-PlatPat 〉で商標・意匠を調べよう」では基本レベルでの検索実習としましたが、今回は意匠公報検索に絞り、委員会で作成したモデルデザイン(ボトル形状・表面グラフィック)を検索対象として、その安全性を確認するために、似ていると思われる先行登録意匠を選び出していくことを学習の目的としました。
セミナーの内容をパッケージ(包装用容器)に特化し、具体的なモデルデザインに対する調査のための検索実習は、すぐに日常業務に活用できる知識として持ち帰っていただけたものと思います。

今回は、検索した登録意匠を対比するところまでとしましたが、安全性を確認するための調査においては、その類否判断力の育成が真の目的となりますので、引き続き今回の延長線上に又、学習の機会が作れたらと思います。

(2018年3月21日 編集・文責:デザイン保護委員会 委員長 丸山 和子)

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情報発信&活動報告


「そのデザイン、本当に提案して大丈夫?〈J-PlatPat 〉で提案デザインの安全を確認する」

JPDAデザイン保護委員会が2月16日(金)に実施しました、<パッケージの提案デザインに似ている登録意匠を見つけるための手法を学ぶ>特許庁意匠公報検索実習セミナー報告です。セミナー当日は、会場のビル1F・正面玄関前に設置されたデジタルサイネージが、今回も又、参加者を迎えました。


(デジタルサイネージデザイン:委員/徳岡 健、会場写真撮影:委員/徳岡 健、大谷 啓浩)

 
<実施概要>

開催日: 2月16日(金) 13:30受付開始 講義開始14:00 終了17:00
講 師: 独立行政法人工業所有権情報・研修館 知財情報部 宗 裕一郎 氏
補 佐: 弁理士 青木 覚史 氏 (三枝国際特許事務所)
弁理士 安立 卓司 氏 (三好内外国特許事務所)
弁理士 岡村 太一 氏 (志賀国際特許事務所)
弁理士 川本 篤 氏 (しろくま特許事務所 )
弁理士 山本 典弘 氏 (鈴木正次特許事務所)※デザイン保護委員会委員
(アイウエオ順)
会 費: 無料
受講者: 24名
会 場: DIC株式会社 本社2F 大会議室/東京都中央区日本橋 3-7-20
主 催: (公社)日本パッケージデザイン協会 デザイン保護委員会

 
講師は、宗 裕一郎氏(INPIT/独立行政法人工業所有権情報・研修館知財情報部)に、ご担当いただき、今回のセミナーのために包装容器に特化したテキストの作成をお願いできました。

今回の学習目標は、課題とした疑似提案デザイン<当委員会が準備したボトルデザイン(模様付)>に似ていると思われる【先行登録意匠】を探し出していくことです。
検索対象がボトルデザインのため、受講者が<F4包装紙・包装用容器>という業務に身近な分類 の中での検索をスムーズに進められるよう、委員会側では手元資料として<意匠分類・Dターム一覧表(抜粋)>を用意しました。
参加者はノートパソコン等の検索器材を持ち込み、講師と共に検索のポイントを確認しながら、似ていると思われる先行登録意匠をピックアップする作業を進めていきました。

「提案デザイン」と「選び出した先行意匠群」に対する類否判断までは、今回の講習に含めませんでしたが、<回答例としての、検索結果一覧>の表をお持ち帰りいただきました。職場や自宅に帰って、この回答例を確認しながら再度検索をしていただければ、大きな研修の効果が見込まれるものと思い、準備したものです。


検索実習風景/講師と受講者と検索サポート者

<当日の流れ>
第1部では、J-PlatPatによる意匠の権利調査について、検索に必要な基礎的な知識を学ぶ講義編となり、基本的な検索モデルのデモンストレーションを講師の画面で追いました。


会場風景/講師:宗 裕一郎 氏

第2部では、いよいよ各自の検索実習となりました。
検索作業の段階ごとに、疑問点の確認ステップを踏んで進められたこと、受講者のそれぞれの個別 の質問には、検索のサポートを担当された5名の弁理士の皆様に対応いただけたこと、又、疑問点の内容により、全体で共有したほうが良いと思われる問題は、各自が検索の手を止めて解説を 一緒に聞くといった流れで、受講者が検索の手順につまずき、そこでストップするという事態を避けることができ、3時間のセミナーを終えることができました。


会場風景/受講者からの質問に答えて


会場風景/講師と5名の検索サポートの皆様

<用意された資料>
・テキスト(講義編)
・テキスト(実習編)
・検索用手元資料(意匠分類・Dターム一覧表/抜粋)
・検索結果一覧表

<マニュアルとガイドブック>
今回も、参加者には「講義テキスト講義編・実習編」と「意匠分類・Dターム一覧表(抜粋)」とは別に、セミナー受講後に参考書として使用いただけるINPIT作成のマニュアルとガイドブックをお持ち帰りいただきました。

<アンケート集計結果>
(当日お書きいただいたアンケート用紙の質問番号は編集のため変えています。)
質問1 あなたのお仕事、役割などについてお聞きします(複数回答可)
質問1-A <業種>
①デザイン会社 (11名)
②メーカー (9名)
③コンバーター・広告代理店 (2名)
④その他 (2名)

質問1-B (職能)
①デザイナー (16名)
②商品開発系 (2名)
③企画系 (7名)
④法務系 (0名)
⑤業務管理 (3名)
⑥その他 (0名)

質問1-C (経験)
①2年未満 (4名)
②~5年 (3名)
③~10年 (1名)
④10年以上 (15名)

質問2 J-Plat Patを業務で使ったことのあるものに○をつけてください(複数回答可)
①特許・実用新案検索 (4名)
②意匠検索 (9名)
③商標検索 (14名)
④使ったことはない (7名)

質問3 本日のセミナーはいかがでしたか?あてはまるものに1つ○をつけてください
①満足 (9名)
②やや満足 (10名)
③どちらともいえない (2名)
④やや不満 (0名)
➄不満 (0名)

質問4 ご参加のタイプは下記のどちらですか?あてはまる方に1つ○をつけてください
①検索実習枠 (20名)
②見学枠 (4名)

質問5 本日ご持参いただいた端末についてお聞きします。お使いになったものに○をつけてください
①Windouwsノートパソコン (10名)
②Macノートパソコン (7名)
③タブレット (4名)
④その他 (0名)

質問6 検索実習を受講された方にお聞きします(対象者数/20名)
①前半の講義は、解りやすかったですか→はい(20名)、いいえ(0名)
②後半、検索実習の説明は解りやすかったですか→はい(19名)、いいえ(1名)
③検索実習は操作をスムーズに進行できましたか→はい(17名)、いいえ(3名)

質問7 見学で受講された方にお聞きします(対象者数/4名)
①前半の講義は、解りやすかったですか→はい(3名)、いいえ(1名)
②後半、検索実習の説明は解りやすかったですか→はい(4名)、いいえ(0名)
③検索実習は操作をこれからやってみようと思いましたか→はい(4名)、いいえ(0名)

・お書きいただいた自由意見、感想 (原文のまま)
①段取りをもう少し
②商標の実習もしてみたかった(ほとんど同じなのかもしれませんが・・・。)
③弁理士の先生方が・・・沢山いらして、質問しやすかったです。よくわかるように説明していただきました
④類似しているか結果の評価方法が知りたかった
⑤使ってみたいと思っていても使い方がわからずに、諦めた事が何度もあった為
⑥2回目の参加です。前回のセミナー後に自分で検索しわからなかったことが学べました
⑦実際の検索をしながらやり方を学習できたので良かったです
⑧調査面での課題、検索面は問題なし。
⑨多数の弁理士の方のフォローもあり、実習がスムースに進み、他の方の質問も共有されたので理解が深まった。
⑩類似の基準が少しあいまいと感じました
⑪普段の実務が、提案時の簡易検索がメインな為にここまで時間をかけれない
⑫今まで調査したくてもプロセスがわからなかったので大変参考になった
⑬丁寧だったので
⑭不明点は無かった。もう少しスピーディーでも良かった
⑮デザインの部隊がある程度確認しながら製作できればより良いと思います
⑯商標検索の方もやってみたかったです
(アンケート結果以上)

-アンケート集計結果から受け止めること-
デザイン保護委員会担当理事 小川 亮

今回のセミナーでは、ご参加いただいた方は主にデザイン会社の方とメーカーの方が半数づつでした。
 デザイナーとして仕事をされている方、ご経験が10年以上の方が共に6割を超え、実務で商標検索はやっているけれど意匠検索は普段はやっていないという方がメインの参加者となりました。
ご参加いただいた方の約8割が検索実習に参加し、満足・やや満足の合計も8割近い結果となり、分かりやすい説明や進行に高いご評価をいただきました。

「弁理士の先生方が・・・沢山いらして、質問しやすかったです。よくわかるように説明していただきまし た」「今まで調査したくてもプロセスがわからなかったので大変参考になった」「使ってみたいと思っていても使い方がわからずに、諦めた事が何度もあった為」「2回目の参加です。前回のセミナー後に自分で検索しわからなかったことが学べました」といった意見がありました。
一方で、今回は法務関係の仕事をしている人の参加はなかったことや「類似しているか結果の評価方法が知りたかった」「普段の実務が、提案時の簡易検索がメインな為にここまで時間をかけられない」「不明点は無かった。もう少しスピーディーでも良かった」といった意見も見られ、今後さらに満足していただけるセミナー内容に向けたヒントを得ることができました。

-当日の進行担当として-
デザイン保護委員会委員 斎藤 郁夫

当日は、受付開始の13:30よりも前から会場にこられる参加者の方もいて、早々に持参したノートPCやタブレットPCを会場内のWi-fiに接続、確認作業が進められ、開始時間前には参加者全員が着席し、14:00の定刻通りにセミナーが開始されました。

セミナーは第1部を講義編として、権利調査の必要性や、J-PlatPatを利用した調査の基本流れをINPITの宗講師が本セミナーのために作成したテキストに従って始められ、第2部は実技編として、J-PlatPatのサイトにアクセスし、宗講師のデモンストレーションに従って実際に検索を体験していただく、といった2部構成で行われました。実技編では、このセミナーのために準備した<PETボトルのデザインの検索モデル>を演習課題として、宗講師とともに、検索のポイントを確認しながら手順に従い画面操作を行い、検索モデルが先行登録意匠に類似するかどうかを判断するための資料を集める、という方法で行われました。検索の実習中は操作に関する質問や疑問点はそのつど挙手していただき、検索サポートとして同席の5名の弁理士の先生方が即座に質問者の元に駆け寄り、共有すべき質問があればその場で皆さまにフィードバックしながら進行しましたが、参加者の皆さまから熱のこもった質問をたくさんいただき、活気あふれるセミナーとなりました。

-2回目の公報検索実習体験セミナーから-
デザイン保護委員会委員 山本 典弘

J-PlatPatの検索セミナーは、今回で2回目です。前回はMAC系でフリーズが連発しましたが、今回はMAC系でも順調に作業ができたようです。何が起こるかわからない手探りの企画で、操作中の疑問に対応できるよう準備し、“新鮮な”疑問にサポート側も勉強させてもらいました。

また、最終目標は「このデザイン案を採用して大丈夫かどうか」だと思います。講義でもありましたように、そのための判断材料集めがJ-PlatPatを使った検索作業になります。デザイン業務で描画ツールが必須のように、J-PlatPatも使って頂ける状況を目指しています。

-初めてのデザイン保護セミナー実施側として-
デザイン保護委員会委員 大谷 啓浩

JPDAの催しに関して、これまでは参加する立場でしたが、昨年からデザイン保護委員会に参加させて頂いており、今回は主催する側として携わる初めてのイベントでした。
当日を迎えるにあたり、講義内容の検討、会場探し、講師の選定や打ち合わせ、当日配布資料の作成と印刷、案内の作成、当日の会場作り等々・・・イベント内容から当日の段取りまで、細かいことを含め、たくさんのことを委員会メンバーで役割分担しながら進められます。
私は初めてということもあり、軽めの役割が与えられました。メンバーの経験値や業務の都合等を配慮した分担がなされるところは、歴史ある委員会の組織力だと感じました。

さて、当日。このセミナーの特徴は実際に手を動かして体験し、すぐに日常業務で活かせることでした。受講者の皆様にはパソコンを持ってきて頂くようお願いしてありましたので、参加される方は知財に関心の高い方だと思いました。

今やデザイナーはデザインを提示するだけでなく、そのデザインを創った者としての責任が求められる時代です。今回のセミナーを通じて、一人でも多くの方にJ-Plat Patを活用頂き、責任ある提案活動がなされることを願っています。
これからもデザイン保護委員会を通じて皆様のお役に立てるよう、活動を続けていきたいと思います。

<会場のご提供に対して>
末尾になりましたが第1回に続き、今回の公報検索セミナーにも、DIC株式会社様に会場のご提供をいただきました。ご担当者様には、会場無線LANの接続が必要なセミナーに対して、より講義を受けやすい会場設営をとのご配慮に、加えて都度のご相談への丁寧なご対応に対して、また当日の準備から始まり、講義中、そして終了まで、お付き合いいただき、快適な環境で無事にセミナーを終えることができましたことに、JPDAデザイン保護委員会一同、心から感謝いたします。

(以上、セミナー報告本文:委員長/丸山 和子)
 

活動報告B


D-8(デザイン8団体協議会)デザイン保護研究会 今年度第3回参加

日  時: 2018年2月21日(水)18:30〜21:00
会  場: 中川ケミカルCSデザインセンター 5F会議室
出席者: DSA/(欠席)、JAGDA/1名、JCDA/2名、JID/2名、 JIDA/1名、JJDA/(欠席)、JPDA/2名、SDA/2名
以上10名会議前半に、D-8運営会議(1月30日)において、これまでのデザイン保護研究会の活動として、「創作証」と「デザイン契約」を取り上げてきたこと、今後の活動は、創作証の普及について、これまではデザイナーの権利を保護することが目標だったが、保護するだけではなく、他人の著作物などを二次利用していくことが多くなるので、文化庁「自由利用マーク」や「クリエイティブ・コモンズ」なども参考にしながら、活用してく方向性を議論して、新しい創作証の在り方を探っていくことを伝えたことが報告された。 後半は、各団体の抱えるそれぞれの課題などが披露され、質疑応答がなされた。

次回日程
・日時:2018年4月18日(水)18:30〜20:30
・会場:(公社)日本サインデザイン協会
〒101-0024 東京都千代田区神田和泉町2-9 富士セルビル4F

以上、議事録からの抜粋報告。

 


引き続き、記事へのご質問・ご意見・ご要望等は下記アドレスで受け付けています。
MAIL:info@jpda.or.jp

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