Vol.106「クリエーターのための知的財産権の基礎/セミナー報告」
デザイン保護委員会では、これまでも知的財産の保護に関する様々なセミナーを数多く実施してまいりましたが、デザインの製作現場での知財の疑問に対応する<基本的な学びの場>として位置付けた企画も、毎年連続開催していくことになりました。
今回は、<法律は、デザインの何を守るのか>を知るために、「デザイン業務に関する知的財産権とその他の保護法・規制法の基礎を、実際の裁判例から学ぶ手法」でのセミナーとなりました。
本号ではその実施報告をお届けします。今年度第1回目となる知財セミナーの「企画立案」「企画から実施まで」「質問から見えてくること」「アンケート集計結果」に対して、それぞれの担当者からの報告となります。
また、会員と一般の参加者数をみますと、一般からが20%に及ぶことも今回注目すべきことです。デザイン保護活動はJPDA協会内だけのものではなく、広く一般との知識の連携が無ければ意味がありません。委員会活動をこのHPを通じて社会に発信していくことの大切さはもとより、改めて、その可能性の重みを感じています。
(2018年10月23日 編集・文責:デザイン保護委員会 担当 丸山 和子)
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情報発信&活動報告
「裁判例から学ぶ デザイン業務に関わる法律のポイントを学ぶセミナー」実施
実施報告 : JPDAデザイン保護委員会
講 師: 松井宏記弁理士 レクシア特許法律事務所 代表パートナー
会 場: 東洋インキ株式会社大会議室(中央区京橋2-2-1 京橋エドグラン内)
参加者: 59名 (会員40名、一般10名、デザイン保護委員8名、経産省デザイン政策室1名)
実 施: JPDAデザイン保護委員会/協 力:JPDA事務局
セミナースタート/松井講師 (会場写真撮影:委員/大谷 啓浩)
会場全景
理事/高田 知之 (手前)、委員長/徳岡 健 (奥)
■今回のセミナー実施を振り返って
・担当理事/高田 知之
デザイン保護委員会主催で、レクシア特許法律事務所、松井代表パートナーのご協力をいただき、「裁判例から学ぶデザイン業務に関わる法律のポイント」をテーマとしたセミナーを開催しました。
「実務に役立つ知識を、わかりやすく学ぶ場を提供する」ことで、パッケージデザインに携わる若手・中堅の方達が抱えている、疑問や向学心に応えたいという委員会の想いを込めて企画しました。
意匠権、商標権という、デザインを取り扱う上で避けて通れない二つの主要な知的財産権について、松井先生による、豊富な事例を交えた明快な解説で、とても理解しやすいセミナーでした。講演終了後も次々と質問がよせられ、時間いっぱいまで質疑応答が活発に行われ、その真剣な姿勢に、改めてセミナー開催の意義を再認識しました。
当日は事前申込者50名に加え、経済産業省より菊地デザイン政策室室長補佐にもお越しいただき盛況に終われたこと改めてお礼申し上げます。
■企画から実施までの流れ
・委員長/徳岡 健
「クリエーターのための知的財産の基礎」セミナーとしてレクシア特許法律事務所代表パートナー松井宏記弁理士を講師に迎え、デザインに関係する意匠権、ブランドに直結する商標権(立体商標や新しい商標)、景品表示法、キャラクターなどを商品化する権利や肖像権などについてわかりやすく説明、解説を行っていただきました。
これまで松井先生のセミナーでは質問が多数寄せられ、丁寧にお答えいただくと時間切れになってしまうことも有りました。セミナー参加者から上げられる質問・疑問は、パッケージデザインにかかわっている方々の「リアルな悩み」、「現場で起こっている本当のトラブル事例」です。それらを参加者皆で共有することが一番の勉強になるのではないかと思い、質疑応答の時間を長く取れるよう内容を調整していただき実施致しました。今回もたくさんの質問が上がり、時間ぎりぎりまで松井先生にご回答いただきました。
デザイン保護委員会では2年前から「新人クリエーター必修!事例から学ぶ・役立つ知財保護」(2016年7月開催)、「だいじょうぶかな?!の前に。侵害事例から学ぶ知財のいろいろ」(2017年6月開催)と知的財産の基礎をテーマにしたセミナーを連続して開催しています。新人デザイナーにとってはプロとしての基礎を勉強する場として、経験豊富なデザイナーにとっては整理・確認していただける場として活用していただき、日々のデザイン業務へお役立ていただければと思います。
今後も知的財産の基礎についてのセミナーは、いろいろなアプローチ、切り口で企画・実施していきたいと考えておりますのでよろしくお願い致します。
■当日の質問から
・委員/山本 典弘
今回の「クリエーターのための知的財産の基礎」セミナーは、異例の30分以上の質問時間を用意してみた企画でした。委員会として「何も質問が出なかったらどうしよう・・・」といくつか質問を用意しましたが、うれしいことに無駄な努力に終わりました。
今回、私がセミナーで頂いた質問を文章に起こす作業をしましたが、文書にし難い難問(失礼!)や答えにくい難問にも丁寧に回答をいただいた松井弁理士には改めて感謝いたします。
「基礎」でなくてベテランでは?!と思える質問も含めて、「事件は現場で起きている」という参加者の皆様の苦労を垣間見られました。
頂いた質問は、デザインする際のコンテンツの扱いやデザインの二次利用、GUI(Graphical User Interface )やキャラクターに関する知財、登録意匠をJ-PlatPatで検索する際の判断、商標出願で「有名さ」をどう証明するか、など多岐にわたりました。
今回は質問者の所属などを表明せずに質問してもらいましたが、質問内容からも、デザン会社系、メーカー系、コンバーター・広告代理店系など様々の立場でパッケージに関わっているJPDAの性格も見てとれました。
また、パッケージデザインの創作過程から成果物が広がる過程で、関係する「知財」も様々ありますので、デザイン保護委員会の一員として、会場で頂いた質問やアンケートを、今後の企画に生かしていかねば!と再認識しました。
■アンケートまとめ
・委員/高林 めぐみ
パッケージデザインに携わる私たちは、日々商品の並ぶ売り場を見て歩き、売り場を彩る様々なジャンルの商品やライバルの商品から新たな商品構想を練ります。そんな日々の習慣によって記憶に留めたり、インスパイアしたことが自分自身の表現を深めたり、または相反するものを生み出したりするわけですが、私たちが生み出したデザインを守ること、先人のデザインを理解すること、当たり前のことのようですがとても難しい時代になっているようにも思います。
今回の受講が初めての方々が8割を占め、キャリアは10年前後の方が7割を占めました。また8割以上の方が提案デザインの知財に関する不安を持っていると答えています。参加者の方の中には、「創作することを狭めてしまうのでは・・・」という所感を持った方もいらっしゃいました。
<知的財産を創造した人の権利を保護し創造意欲を促進する必要がある。それが知的財産権制度である。>コトバンクより
創造意欲を促進するため、2番手ではないデザインを生み出すため、私たちがしなければいけないことが何なのかを考えさせられるセミナーでもありました。
<集計結果>
(以上、セミナー報告)
委員会ヒトコト通信
次号:Vol.107 は、セミナーの講義の解説をお届けします。
本号で実施報告をしました、-クリエーターのための知的財産権の基礎-「裁判例から学ぶ デザイン業務に関わる法律のポイントを学ぶセミナー」の講義内容について、講師の解説をお届けします。
公開は11月中旬の予定です。
引き続き、記事へのご質問・ご意見・ご要望等は下記アドレスで受け付けています。
MAIL:info@jpda.or.jp