デザインの権利と保護

Vol.127 「知財くんがゆく」新連載開始!

2022.8.23

デザインの権利と保護コーナーでは、知財関係のセミナーのご案内や、デザイン保護に関係する事柄を会員の皆様と一緒に考えて行きたいと思い、2009年より情報発信を続けてきました。
この度、「知財くんがゆく」と名付けた新コーナーを開始します。デザイン保護委員会で話題になったことや、世間で話題になったパッケージデザインに関係する知財についてのあれこれを、不定期の連載になりますがコラム形式で発信していきます。第1回は、デザイン保護委員会の委員でもあります鈴木正次特許事務所 山本典弘弁理士「意匠法 1つの意匠」についてのコラムです。(編集・文責:デザイン保護委員会)

知財くんがゆく 第1回

<意匠法 1つの意匠(1)>

意匠法では、1つの出願に1つの意匠しか記載できないとする「一意匠一出願」の原則があります。さまざま言い方ができますが、意匠(ここでは新たに入った建築と画像は考えません)を「物品」と「形態」(形状、模様、色彩)の組み合わせで考える場合、物品が2つある場合や、形態が2つある場合は許可しないという原則です。

 

意匠登録1571832号

「容器付きの冷菓」

 

【意匠に係る物品の説明】本物品は、参考断面図に示したように、容器部内に冷菓部材を充填し、次いで前記冷菓部材の上面全部をあん部材で覆い、次いで前記あん部材上にもち部材を点状に配設し、これらの全体を冷凍して容器部と一体に流通に付されるものである。

 

【正面図】

A-A断面図】

器付きの冷菓(いわゆるアイスクリーム)」という、容器に入った冷菓が表された出願がありました。特許庁の審査・審判では、「容器」と「冷菓」の2つの物品と2つの形態が書いてあるので、当然、拒絶になりました。出願人はこれを不服として、裁判()を起こしたところ、裁判で、特許庁の判断が覆り、最終的に登録(登録1571832)が認められました。

裁判では様々な論点がありました。容器に入ったまま流通するし、買って食べる人も容器に入ったまま食べるので一体だ。いや、予め容器を作って、容器の中に冷菓を入れるので、別々に作られるし、流通時には必ず蓋が付き、このままで流通しないので一体ではない。など。

 結局、社会通念上(知財では良く出る)、1つの物品であるし、一塊になっているし、あくまで主は「冷菓」、容器は従であり、全体として1つの意匠になっている。という判断でした。

 この事件以降、以下のような登録もなされています。また、意匠法もこの一意匠一出願の原則を緩くする方向の法律改正もなされています。

 

意匠登録第1700664号「容器付き菓子」

【意匠に係る物品の説明】

本物品は、透明な容器の内部に収容されてなる菓子である。本物品は、販売状態を示す参考図に示すように、カラフルなムース、スポンジケーキまたは生クリーム等を積層してなる菓子である。

 

【正面図】

【販売状態を示す参考図】

 

意匠法でも、この種の登録では中身の工夫が主ですが、今後パッケージの特徴が主で、パッケージと中身の商品とを組み合わせたデザインも保護できる可能性がでてきました。

 

知財高裁 平成28年(行ケ)第10034

 

「知財くんがゆく」へのご意見、こんなテーマを取り上げてほしい、ご感想などお寄せください。

(公社)日本パッケージデザイン協会 事務局

デザイン保護委員会「知財くんがゆく」宛

info@mail.jpda.or.jp 

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