情報の森コラム

ご当地レトルトカレー・パッケージデザイン考 2)ドドーン系

[特産品/地域活性化] 2017.6.30

今回から具体的なパッケージ事例を見ていきます。ご当地レトルトカレーとの出会いは、旅先でしたら一期一会ということもありますね。(またその土地に来るとは限らない) アンテナショップでは、定番化しているものもあれば、入れ替えもあるので、次来た時に買おうと思っていたらもはや店頭にないということも。(単に入荷待ちという場合もあります) 百貨店の物産展では、レトルトカレーは必ずしも強くアピールされておらず、チラシには掲載されていないものの会場に行ってみたらいくつもゲットできるということもあり、マニアは気が抜けません。いずれの場合もその土地の各種ご当地商品、名産品、特産品の中から商品が選択・購入されていくので、競争は厳しいですね。まずはいかにインパクトを出して気が付いてもらうか、というのもデザイン上の大事な要素のひとつです。まずは「ドドーン系」をご紹介しましょう。

*商品名の次はパッケージ裏面に表示されている販売者名または製造者名です。(法人格省略)
*参考価格は、時期、場所で異なる場合があるので、ご承知おきください。(特に記載がない場合、税込み価格)

■ドドーン系
ご当地食品の柱は、なんといっても地場の特産品である一次産品を加工したもの。野菜、肉、魚など主要材料をドドーン!とパッケージ正面に配した系統。まずは「お野菜ドドーン!」の例。

◆北海道
幻のじゃがいもマチルダがゴロっと入った十勝めむろカレー
芽室町農業協同組合(北海道芽室町)
参考価格:各432円

「めむろ=芽室」は地名です。マチルダはじゃがいもの品種、素人には写真だけでは品種はわからないものです。しかも「幻」ですからね。調理例写真は2016年秋のリニューアルで追加されたとのこと。この商品はリニューアル以前に近所のスーパーで見つけ、ひとまず赤い方だけ買ったのですが・・・あ~ 黄色い方の旧デザインが幻になってしまった!

◆埼玉
北本トマトカレー
北本市観光協会【北本トマトカレーの会】(埼玉県北本市)
参考価格:540円

みずみずしいトマトを全面にフューチャー。北本は名産のトマトで町おこしをしていて、市内各地の飲食店が「北本トマトカレー三か条」を満たしたカレーを提供。数々のカレーコンテストでも上位に食い込み、2014年にはご当地カレーグランプリで優勝。箱の内面には「全店マップ」が印刷されています。(買った人しかわからない)

◆兵庫
淡路牛玉ねぎカレー
うずのくに南あわじ(兵庫県南あわじ市)
参考価格:540円

ビーフを使っていても主役は玉ねぎ! 事業者事例集で開発ストーリーを紹介している「淡路島しらすカレー」と同じ事業者の商品、斜めの帯に商品名などデザインフォーマットが共通です。この玉ねぎドドーン!のシリーズはアイテムが増えていて、他の特産野菜やステーキ肉と組み合わせたものなどもあります。

◆宮崎
厚切り椎茸とシメジのきのこカレー
宮崎経済連直販(宮崎県宮崎市)
オープン価格

九州はじめ各地にきのこを使ったカレーがありますが、筆者が知る限り椎茸全形を大きく取り上げているのはこれだけ。同じ事業者から同一フォーマットのデザインで「高千穂生まれのトマトカレー」も出ています。全国各地にあるトマトカレーのパッケージは、ドドーン系含めそれぞれ特徴のあるデザインなので、いずれまとめてご紹介します。

野菜は(品種はともかく)日常的にその姿をよく目にするものなので、安心感があります。たった一つを画面いっぱいに大きく配することで、見慣れたものとは異なる印象を与え、それがインパクトになっていくのでしょう。記号として記憶もされやすくなりますね。

次に「お肉ドドーン!」、各地のお肉の専門店がブランド牛を使ったレトルトカレーを商品化しています。ブランド牛は、加工前のお肉そのものを見せるのが王道のようです。お肉屋さんの店頭で、「本日のおすすめはこちらでございます」という感じでしょうか。(いずれも、写真はイメージである旨を表記)

◆岐阜
飛騨牛ビーフカレー
吉田ハム(岐阜県大垣市)
参考価格:948円

アップのお肉の写真。都心のスーパーでもよく目にします。ご当地商品は、全国区を目指す場合とあえて販売エリアやチャネルを限定する場合とがあります。(生産量との兼ね合いも) ご当地レトルトカレーの中でもお肉を打ち出した商品は、スーパーでの高価格帯商品のラインアップで定番品としての期待が大きいのかもしれません。(個々の取引条件や販売実績が関係するのは言うまでもありません)

◆三重
松阪牛ビーフカレー
杉本食肉産業(愛知県名古屋市)
参考価格:1500円+税


(画像提供:杉本食肉産業)

三重といえば松阪牛。お肉好きは「まつさかうし」と読みますね。(三重県の親戚は松阪を「まっつぁか」と発音していました) この商品、今年6月にリニューアルをしたそうで、順次切り替えを進めているとのことです。中身もパッケージもさらに豪華に。お肉の写真は旧デザインから固まり肉、リニューアルでサシの入り方がさらに絶妙になり、シズル感もアップしました。

◆滋賀
近江牛カレー超絶
元三フード(滋賀県大津市)
参考価格:1478円

上部にスライスしたお肉の写真、タイトル文字(箔押し)のバックには琵琶湖の風景。素材の品質感とその土地らしさと両方をアピールしています。「超絶」の文字が、数ある近江牛カレーの中でワンランク上を感じさせます。

お肉を売りにしたご当地レトルトカレーは、リアルな写真による「お肉ドドーン!」の他にも「文字だけ系」や「生き物写真系」などさまざまなデザインスタイルがあります。また価格の幅も広く、マニアは正直1000円を超えると高品質であろうことはわかっていても、悩みます。(十勝めむろカレーの経験もあり、出会ったこの機会を逃すと次また巡り会えるとは限らないので、迷った末に買うことに) 中には5000円を超えるものもあります。さすがにまだ入手しておりません。(そこまで度胸がない)

野菜、お肉の場合、素材そのものを写真で大きく表現するのに対し、同じ生鮮品を素材にした「おさかなドドーン!」では、必ずしもリアルとは限りません。シズル感との関係でしょうか。(マグロのかぶとや蟹まるごとなど、海鮮の写真を配したリアル路線の例はいろいろありますが、魚の切り身を写真で配したものは見たことがありません)

◆宮崎
宮崎産チョウザメカレー
(宮崎県宮崎市)
参考価格:864円

水槽を泳いでいるシーンを彷彿とさせるモノトーン調のイラスト。チョウザメにもいろいろな顔があるものです。タイトル文字は箔押し。チョウザメといえば、その卵はキャビア。宮崎県はチョウザメの養殖日本一だとか。親も子もご当地商品となっています。

◆福井
さばカレー
ホテルアーバンポート(福井県小浜市)
参考価格:756円

愛嬌のあるイラストでサバを表現。「さばトラななちゃん」は、福井県小浜市の公認キャラクター。(ご当地キャラクターとコラボをしたレトルトカレーはさまざまあり、またの機会にご紹介) カレーに使われているのは地元企業のサバ缶、写真が出ていますね。裏面には地元の水産高校も開発に関わっているとの記載があり、この商品、ドドーン!系で取り上げたものの、キャラクター系、産学協同系など多くの要素を含んでいます。

■文字ドドーン
ここまでは原料・素材をドドーン!と配した系統を見てきました。ドドーン系の中でも取り上げたのは、ほんのごく一部です。(終売になっている等の理由で掲載許可が得られなかったものもあり残念) 最後に「文字ドドーン!」を見てみましょう。一文字を大きく配したタイプで、カラーリングとともに製品の特徴をシンボル化しています。

◆静岡
静岡わさびカレー
キイチ食品(静岡県島田市)
参考価格:378円

「辛」の漢字の中に「ツーン」の文字。プラボトル入り「わさびオリーブソース」が添えられていて、好みの「ツーン」に調整できるようになっています。パッケージはわさび漬けのように紐掛けがされていて、らしさを強調。料理イラストは盛付例や調理例ではなく、読んで字のごとく「想像図」。わさびソースを全部かけるとこんな感じ? 想像してみてください。

◆青森
青森りんごカレー
ラグノオささき(青森県弘前市)
参考価格:362円

さすが、りんご生産量日本一の青森県(中でも弘前市は市町村別で桁違いのトップ)、りんごもカレーになっています。「り」の文字はりんごの果肉の色ですね。背景の赤(皮のイメージ)と相まってりんごらしいカラーリング。特産の果物を使用したカレーも各地に多数ありますが、果物の写真をドドーン!と大きく扱ったものはあまり多くはなく。(そこそこの大きさで料理写真と組み合わせたものは多々あります)

文字を強調した系統には、この他にシズル写真やイラストを一切入れずに文字だけで攻める「文字だけ系」も。また、ドドーン系の変わり種として「顔面ドドーン!」というべきものもあります。次回はパッケージに表現された「顔」にスポットを当てます。

■TOPICS
2017年6月3日~4日の2日間、よこすかカレーフェスティバル2017が、神奈川県横須賀市の三笠公園で開催されました。来場者の人気投票で決まる全国ご当地カレーグランプリでは、黒部ダムカレー推進協議会【黒部ダムカレー】が優勝。準優勝は、とまこまいカレーラーメン振興局【元祖カレーラーメン】、またカレーマスター賞に、北本トマトカレーの会【北本トマトカレー】が選出されました。


▲2日目に会場内で発表されました。右奥にちらりと見えているのは、世界三大記念艦「三笠」。

(記:中越 出)

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