情報の森コラム

ジャポン パッケージデザインの底力

[エコ/サステナビリティ] 2010.5.16

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数年前にフランスのパッケージデザイン会社を2週間ほどかけて30社ほど訪問したことがあります。パリを中心にボルドーの方にいったりして、半分は旅行気分だったのですが・・・。なによりオフィスのデザインがかっこいいのです。インテリジェントオフィスだったのはドラゴンルージュくらいで、あとは昔からの建物を今っぽくアレンジしてクールに使っていました。元は百年前の建物だったり、中には元教会だったりと・・・。制作にかけることのできる時間もなんだかゆったりしていて素敵でした。新商品のライフサイクルに追われまくる日本のパッケージデザイン業界とは、ずいぶんオフィスを流れる空気が違うなあという印象です。化粧品・香水・ワイン・シャンパンなどなど。このへんのデザインはさすがオリジンの国だけあって、洗練されていました。ワインのラベルなんかは古い感じを出すのに専任のスタッフや紙加工の技術があって、ワクワクしながら見せていただきました。

そんな中、あるデザインオフィスで、「いやぁすごいなあ~さすがだなあ~。」などと言いながら、作品を見ていると、そのデザイン事務所の社長が一冊の大きな本を持ってきました。「これ、日本のパッケージデザインでしょ。日本のデザインってすごいよね。すばらしい。」そこで紹介されたのは、卵を5つほどでしょうか、割れることなく運べるように藁で丁寧に編みこまれたパッケージでした。おそらく昔の日本人が考え出したパッケージだと思います。「日本人はよくこんな発想とクールなデザインができるなあ」と言われ、なんだか嬉しくなりました。やるじゃないか、ジャポン。「日本人は自然をリスペクトしてるからね」などと自慢げに話してしまいました。よく考えたら、この卵を藁で包んだパッケージ、「リユース、リデュース、リサイクル」そのものでは。無駄が一切ない機能美。日本人の「包む」ということに対しての美意識。フランスでじわっと実感した瞬間でした。実はこの日だけでなく、フランスのデザイン会社の多くが、日本のパッケージデザインの関連書籍を持っていて話の最中に持ってきては、「日本のパッケージはなかなかクールだ」とほめてくれました。半分はわざわざ日本からパートナー探しにやってきた若者へのリップサービスだったのかもしれませんが、日本のパッケージデザインって力あるよなあと思いました。

家庭ごみの6割がパッケージ。何とか環境問題に前向きに取り組まなくてはと参加した調査委員会でしたが、実は身近な日本の昔の人たちの知恵の中にたくさんのヒントがあるかもと思ったフランスでの出来事でした。

(記:小川 亮)

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