ニッポンのパッケージデザイン<2013年度調査>結果概要
V.参考 パッケージデザインと特産品(特産品のパッケージデザインを考える上での参考情報)
1.パッケージデザインの役割
パッケージには、商品を量的に単位化し、運搬しやすく保護し、品質を守るという「容器」としての役割(道具性)とともに、施されたデザインを通じて企業など送り手からのメッセージや商品情報を、使い手である生活者に伝達する「コミュニケーションツール」としての役割(情報性)があります。
そのため、パッケージデザインの制作においては、商品企画によって導き出された商品コンセプトをベースに、それを伝達するための最適な手法でデザイン表現することが重要とされます。パッケージデザイン表現では、中身が何かといった基本的な情報伝達の他にも、他の商品と比べて優位な点は何か、またその商品を購入・使用することでどのような価値がもたらされるかといった作り手の思いやメッセージを、商品個々にふさわしい「表情」で伝える必要があります。(図表1)
また、その商品が販売される売り場はどこか、買い手は誰か、購入目的は何か…等、商品の目的・用途を考慮してデザインすることも必要です。店頭で消費者に適切な情報伝達を行うことは、購入の促進につながるため、パッケージデザインは商品の売上を大きく左右する要素とも言えます。
2.特産品パッケージを考える上で
日々の暮らしに必要なものをスーパーやコンビニで購入するのと、特産品を購入するのとではおのずと違いがあり、パッケージデザインもそれに適した表現が求められます。 特産品の主な特徴としては次のようなものがあり、購入にもさまざまなケースが考えられます。
◆特産品の主な特徴
・売り場が多様:旅先の:駅、サービスエリア、道の駅、土産物店、製造直販店、観光スポット等
居住地に近い:アンテナショップ、物産展、百貨店、スーパー等、その他通販も有
・購入目的が多様:職場へのお土産、手土産、ギフト、自宅用等
・購入者が多様:世代性別問わず、商品のターゲットの幅が広い
・内容物が多様:一次産品(青果物、海産物)、加工食品、菓子、飲料、酒類等、また工芸品等
【売り場が多様】
駅やサービスエリア等の非対面販売店舗でセルフ販売される場合は、パッケージや限られた店頭POPで多くの商品情報を説明する必要があります。それに対し、百貨店や物産展、製造直売店等の対面販売店舗では、店員の説明やディスプレイ等によって商品説明を補足できるために、必ずしもパッケージデザインに全ての情報を盛り込むことはせずに、ブランド訴求をデザインの中心にする場合があります。 また、評判を聞いた商品や過去に購入し気に入った商品を通信販売でお取り寄せするなど購入チャネルは広がっています。
【購入目的が多様】
特産品購入の目的が、旅先や出張先で職場や友人等へのお土産として購入する場合、個包装された商品の方が配りやすく利便性が高いということもあり、また入り数が重要な選択基準の一つにもなります。逆に、旅の記念として自家用に購入する場合は、内容物・パッケージ含めて、その土地の独自性が高く反映されたものをより強く期待することもあります。
【購入者が多様】
修学旅行生が限られた予算で購入する、出張のビジネスマンが職場用に買う、高齢者がゆったりしたツアーの旅先で自宅用に買うなど様々です。購入者それぞれの事情によって、じっくり選ぶ場合もあれば、短い時間の間に選択~購入をする必要もあり、何を想定するかでパッケージデザインで強調するポイントも変わってきます。
【内容物が多様】
購入目的にも深く関連しているのが、どういったジャンルの商品を選択するかといった点です。食品でもすぐ食べられる菓子にするか調理を必要とする一次産品や加工食品ものか、異なるジャンルの商品が競合関係にあると言えます。特に自宅用では商品選択の幅も広がります。
【評判や事前情報】
旅先であっても物産展等であっても、予めその商品やブランドを知っていて指名買いする場合と、店頭で初めて商品を知り購入する場合とがあります。あるいは「仙台の笹かまぼこ」のように地域と特産品のイメージのみを知っていて、メーカーや商品の選択は店頭で、というケースもあるでしょう。テレビや雑誌での話題、インターネットのクチコミ評判といった事前情報も商品選択に影響を与えます。
以上は、主な特徴であり、実際の商品選択の場面ではその他にもさまざまな要素が関係していきます。お土産やギフトとして利用されるものは特に購入する人(買い手)だけでなく、もらう人(使い手)が受ける印象にも配慮が必要です。何を想定してパッケージデザインに作り手の思いやメッセージを表現するか、5W1Hを考慮しながら、訴えるべきコンセプトを明確にし表現していく必要があるでしょう。(図表2)
3.パッケージデザインに関連する法令
特産品に限らず、パッケージデザインや表示に関連した法令には、図表3に示すようにさまざまなものがあります。表示に関わる法令の多くは、安全の確保、消費者の利益保護、不公正な取引の防止などの目的で制定されています。パッケージデザインにおいては、これらに適合させて制作する必要があります。
公正競争規約は業界団体ごとに自主的に制定するルールで、例えば全国観光土産品公正取引協議会では、必要表示事項/過大包装の禁止/特定事項の表示基準/不当表示の禁止などを定めています。
>>> 全国観光土産品公正取引協議会
法令ではありませんが、近年ではパッケージの環境対応やユニバーサルデザイン対応が強く求められるようになっています。パッケージの環境配慮やユニバーサルデザインについては、JPDAサイトの下記ページでも紹介しておりますので、合わせてご覧ください。(別ウィンドウで開きます)
>>> 【情報の森】エコとパッケージデザイン
>>> 【情報の森】ユニバーサルデザインとパッケージ
4.さらに詳しくパッケージデザインを知るために
パッケージに関する参考資料や関連リンクをご紹介します。
■パッケージデザインについて知る(JPDAおよび会員による主な関連図書・順不同)
◎パッケージデザイン作品集
『パッケージデザインインデックス2014』 企画/監修:日本パッケージデザイン協会(六耀社 2014年)
『年鑑日本のパッケージデザイン2013』 企画/監修:日本パッケージデザイン協会(六耀社 2013年)
『メンバーズワーク・トゥデイ2012』 企画/監修:日本パッケージデザイン協会(六耀社 2012年)
◎パッケージデザイン解説書
『パッケージデザインを学ぶ』 白尾隆太郎・福井政弘・ほか(武蔵野美術大学出版局 2014年)
『シクトマップス パッケージデザインのすべて』 フミ・ササダ(宣伝会議 2011年)
『パッケージデザインの勘ドコロ』 企画/監修:日本パッケージデザイン協会(六耀社 2011年)
『図解でわかるパッケージデザインマーケティング』 小川 亮(日本能率協会 2010年)
『パッケージデザイン−夜も地球もパッケージ』 金子修也(鹿島出版会 1989年)
■デザイナー/デザイン情報サイト
◎デザイナーを探す
日本パッケージデザイン協会 マイワークス(JPDA会員作品の紹介)
Japan Designers(さまざまな分野のデザイナーデータベース)
◎デザイン活用に関して
東京都中小企業振興公社 デザイン活用ガイド
■特産品に関連した公的団体のサイト(支援事業や特産品情報など・順不同)
◎中小企業庁 商業地域サポート
◎日本商工会議所
・feelNIPPON 地域力活用新事業∞全国展開プロジェクト
◎全国商工会連合会
・むらからまちから館
◎J-Net21(運営:中小企業基盤整備機構)
・農商工連携事業
・地域資源活用事業
◎食品産業センター
◎本場の本物
(2014年4月掲載 調査研究委員会)