リサーチ & 研究報告

ニッポンのパッケージデザイン<2013年度調査>結果概要
III.事業者調査結果概要(アンケート「売れる特産品開発に向けたパッケージデザイン調査」)

1.調査概要

2013年度「ニッポンのパッケージデザイン調査 ~特産品開発におけるパッケージデザインの役割と課題~」の一環として、特産品開発に取り組む全国の事業者を対象にして「売れる特産品開発に向けたパッケージデザイン調査」と題してアンケート調査を実施しました。調査概要は以下の通りです。

【調査目的】 特産品開発において、事業者がパッケージデザインをどのように開発されているか
を調査し、特産品開発におけるパッケージデザイン開発の現状把握をする
【調査手法】 郵送留め置き調査
【エリア】  全国
【調査票配布先】 特産品開発に取り組む事業者
【対象カテゴリー】 加工食品・菓子・飲料など
【配布数/回収数】 配布数 479件 回収数 61件
【調査時期】 2013年9月7日~30日
【回答事業者の属性】 主力商品は加工食品が7割弱を占め、従業員は20人未満、
売上は1億円以内の中小企業が半数を占める(図表1)

III_Fig_1

【質問事項】
・御社の商品開発において、重視している点
・御社の商品開発において、『パッケージデザインの開発』をどの程度重視していますか
・御社が商品開発において、困っていることはありますか
・これまでに、御社が商品開発の相談したことがある会社・人物が以下の中にいますか
・御社はパッケージデザインを主に誰に依頼していますか
・現在依頼しているパッケージデザインの担当者・会社にどの程度満足していますか
・現在依頼しているパッケージデザインの担当者・会社に、今後手伝ってほしいことはありますか
・御社の1商品あたりのデザイン料がどれ位ですか
・御社はこれまでパッケージデザイン開発で悩んだことがありますか
 

2.商品開発におけるパッケージデザイン開発の重視度

「商品開発において、重視している点」「商品開発において、 『パッケージデザインの開発』をどの程度重視しているか」については、以下のような結果となりました。(図表2)

III_Fig_2

パッケージデザインの開発は、コンセプトの開発や味の開発に続いて重視されており、パッケージデザインが商品開発の重要なポイントとされています。また、【パッケージデザインの開発】の重視度は、【味の開発】より若干落ちるものの、【商品アイデア(コンセプト)の開発】と同程度重視されており、その度合いは【新たな販売先の開発】よりも高いものになっています。
いずれの質問からも、パッケージの開発は重要視されていることがわかります。

「パッケージデザインの開発を重視する理由」としては、以下のようなものがあげられました。
(自由回答より抜粋)

・手に取る動機づけとして最も重要。
中身がどんなによくても、パッケージデザイン次第で全く売れない商品となる。
・どんなに良いコンセプト・味でも、お客様の手に取ってもらわなければ販売にはつながらない。
・強いファーストインプレッションを持ち、かつ商品コンセプトを分かりやすく表現したパッケージ
デザインは極めて重要と考えている。
・消費者が「買う」と決めるのには15秒程度、
決めるのは(つかみは)パッケージ→次にコンセプト→味へ信頼(ブランド)、と考えるから。
 

3.パッケージデザインの依頼とデザイン料

パッケージデザインを開発するうえで、デザインをどこに依頼するか、またデザイン開発のプロセスで何を行っているかを聞きました。(図表3)

III_Fig_3

パッケージデザインの依頼先としては、社外のデザイン会社・デザイナーに依頼する事業者が4.5割、印刷会社・包材メーカーに依頼する事業者が3.3割で、これらが大半を占めています。その他の6.7%は店主や代表自身がデザインを担当しているとの回答でした。
また、デザインの検討・決定は8割弱の事業者自身が行っていますが、(直接的な)デザイナーの選定・オリエンテーションは半数程度の事業者しか行っていない、という結果になりました。

続いて、デザイン料の額と、デザイン料の支払いの仕方がどうなっているかを聞きました。(図表4)

III_Fig_4

1商品あたりのデザイン料は、1万円未満が1.2割、1~5万円未満が4.5割、5~10万円未満が1.5割で、これら10万円未満のデザイン料をあわせると全体の7割以上にも上ります。高額の例や「デザイナーと年間契約をしている」という回答もありましたが、きわめて少数です。
パッケージデザインの依頼先として「印刷会社・包材メーカーに依頼している」と回答した事業者にデザイン料の支払い方法を聞いたところ、デザイン料として払っているのは全体の3割で、半分以上は印刷料に込みでデザイン料を支払っています。
 

4.パッケージデザイン依頼先への満足度

現在、主に依頼しているパッケージデザインの担当者・会社にどの程度満足しているかについては、2割強の事業者が「満足している」と回答、その一方、3.5割の事業者が「どちらともいえない」「あまり満足していない」と回答しています。(図表5)

III_Fig_5

さらに、どこにパッケージデザインを依頼しているかと満足度の関係を見てみると、社外のデザイン会社・デザイナーに依頼している事業者が最も満足度は高い、という結果になりました。サンプル数は少ないものの、社内のデザイナーが担当、印刷会社・包材メーカーに依頼する事業者の順に満足度は下がり、「どちらともいえない」「あまり満足していない」の割合が増えていきます。
これは、「デザイナーと直接コミュニケーションをとれるかどうかが満足度に影響する」ということを示唆しているともいえます。また、依頼先のデザイン提案力とともに、デザイン料をどのように支払っているかも影響している可能性があります。

パッケージデザインの担当者・会社への満足度の理由としては以下のようなものがあがっています。(自由回答より抜粋)

■社外のデザイン会社・デザイナーに依頼
・パッケージデザインを変えたら商品の売れ行きが上がった。
・こちらの意図を解ってくれていて「このような感じのデザイン」と言えばイメージを作ってくれます。

■社内のデザイン会社・デザイナーが担当
・何度も続けてデザインをするとマンネリ化してしまう。デザインの傾向に片寄りがある。
・社内担当者が、基本デザインをつくり、印刷会社デザイン担当者が、フォント/色合わせをして仕上げるのが従来の流れだが、社内担当者はデザインのエキスパートではない為、インパクト・コンセプトの分かりやすい表現に不満が残る。

■印刷会社・包材メーカーに依頼
・独自性がない。
・デザイン力に乏しい。
 

5.デザイナーへの期待

特産品開発に取り組む事業者は、商品開発やパッケージデザイン開発においてどのような課題を抱えているでしょうか? 商品開発では、販路の開拓に続いてパッケージデザインが課題としてあげられています。パッケージ開発を進める上での悩みとしては、「気に入ったデザインができない」を筆頭に予算の問題、また消費者に好まれるデザインやデザイントレンドがわからない、ネーミング開発ができない、といったものになっています。(図表6)

III_Fig_6

「気に入ったデザインができない」要因として、
①商品コンセプトにあったデザイナーを選定できていない
②商品コンセプトがデザイナーに伝わっていない(デザインオリエンテーションの不足)
といったことが想定されます。予算の問題を抱えるとはいえ、適切なデザイナーを選定し、十分なコミュニケーションを図ることが求められるといえるでしょう。

また、商品開発においてはパッケージデザイン開発にも困っていることから、商品開発の相談相手として「商工会議所や商工会」に並び「社外のデザイン会社やデザイナー」を半数以上の事業者があげています。さらに「現在依頼しているパッケージデザインの担当者・会社に、今後手伝ってほしいこと」には、「新しいデザイン」に続いて「ネーミング開発」(50%)「キャッチコピーの開発」(42.6%) も多くあがっています。事業者はパッケージデザイン関係者に対して、パッケージ形状やグラフィックデザインといったものだけでなく、トータルなイメージづくりを期待していることがうかがえます。
(図表7)

III_Fig_7
 

6.まとめ ~5つの気づき~

今回の、特産品開発に取り組む全国の事業者を対象にした「売れる特産品開発に向けたパッケージデザイン調査」を通して、特産品商品開発とパッケージデザイン開発における実態や課題、また期待が多く見えてきました。主なものとして以下のようなものがあげられます。

①パッケージデザインの開発は重視されているものの、【満足のいくパッケージデザインができ
ない】という悩みがある。

②半数近くの事業者がパッケージデザイン開発を社外のデザイン会社やデザイナーに依頼しており、
デザインに対する満足度も社内のデザイナーや印刷会社・包材メーカーに依頼している事業者など
と比較して高い。

③1商品あたりのデザイン料は、1~5万円未満が最も多く半分近くを占め、10万円未満が全体の
7割以上を占める。

④パッケージ開発の悩みとして【気に入ったデザインができない】【予算がない】【消費者に好ま
れるデザインがどれかわからない】【デザインのトレンドがわからない】などがあげられる。

⑤ 今後、パッケージデザインの担当者・会社に手伝ってほしいこととして、「新たなデザインの
開発」と共に「ネーミングの開発」「キャッチコピーの開発」もあげられる。

予算という大きな課題がある一方で、パッケージデザインそのものと、デザイナーへの期待は大きなものがあります。特産品のパッケージデザインを開発するデザイナーには、商品開発のプロセスを通じて特産品の魅力や商品の特長を的確に伝えるために「デザイン制作の力」と共に「ネ―ミングやキャッチコピーを提案する力」が期待されています。かたや事業者は、適切なデザイナーを選定するとともに、商品コンセプトを明確にし、「商品の魅力はどこで、それをどんな風に伝えていきたいと思っているか」をきちんとデザイナーに理解してもらう「デザインのオリエンテーションの力」が必要です。
両者ともに市場や消費者に対する理解が不可欠なのはいうまでもありません。それぞれがもつ専門の力を発揮し、密なコミュニケーションを図ってこそ、新たな魅力をもった特産品が生まれていくことでしょう。
 
*以上の事業者調査と同時に、各事業者が取り組む特産品開発の事例収集を行いました。
これら事例は、特産品開発事業者事例集 に掲載しています。(その後に収集した事例も追加しています)

ニッポンのパッケージデザイン<2013年度調査>結果概要

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