リサーチ & 研究報告

ニッポンのパッケージデザイン<2015年度調査>デザイナー調査
II.地域デザインの特性とデザイナーの役割(調査で見えてきた 地域で活躍するデザイナーの声)

アンケート調査概要

都市部在住で主にパッケージ関連のデザインを行うデザイナーに対して、地域に拠点を置き、特産品など商品開発に携わるデザイナー、ブランド開発デザイナーを対象に電話アンケート調査を行う。具体的な事例や課題解決事例から地域ならではの活動の実態や特性、地域での貢献や役割を探ります。

【調査対象者】 地域在住のJPDA会員/日本パッケージデザイン大賞2015入賞者/
ブランド開発デザイナー 計20名
【実施期間】 2015年3月2日(月)〜10日(火)
【調査方法】 電話によるアンケート調査
 

デザインのお仕事は足を運んでやってくる

お仕事の出会いやきっかけにも地域ならではの特色があるようです。

CASE 1 ほぼ95%は知り合いの紹介とか、以前仕事をしたお客さんの紹介。HP見てきたというケースも何件かあった。ある程度デザインに対して理解のあるお客さんが来る。

CASE 2 県にデザインセンターというのがあって、そちらから声がかかることはある。

CASE 3 仕事は人の紹介が多い。同業者からの紹介もある。中小企業は直接話が来たことも。

CASE 4 ほとんどが地元のメーカー。直クライアント。

CASE 5 だいたい口コミで仕事がくる。前に仕事をしたお菓子屋さんの紹介だったり、新聞で掲載されたのを見て電話をかけてこられたり。

CASE 6 ほとんどは生産者さんからの直接の仕事。

CASE 7 社長同士がお知り合いということが多い。「あなたに作ってもらったパッケージを、○○の社長に見せたら、これ誰がつくったの?」となって話がくる。

CASE 8 いろいろなところで、セミナーや講演会をやっていたら、声がかかるようになった。

CASE 9 商工会から平均的に仕事が来る。会員の人にもまたやってあげたいという感じがある。僕も実績になる。

◆仕事の依頼は、クライアント同士のつながりや、行政からの依頼が多いようです。
 

地元の想いを感じとる

クライアントはほとんど生産者本人や社長。そしてその互いの強い想いが交差するお仕事とは。

CASE 1 やりがいのある会社、お人柄だった。

CASE 2 一生懸命、デザインとはという話をして、農家さんもやっぱりこっちがいいよねと乗ってくれ、JAさんを説得してくれた。販売先も、決まってなかったが、商品が出来てから農家さんが置いてもらえませんかと、いろいろな所に自ら売り込みに行った。

CASE 3 自分の利益にならないのに、なぜそこまで喜べるんだとクライアントから言われる。頑張っている人は応援したい。

CASE 4 これは市からの仕事で、担当の人が予算を集めてくれた。デザインの力をわかってくれると、予算をなんとかしてかき集め、販促物などの仕事も作ってくれる。色々広げられることができ、メッセージの発信力が強くなって結果がついてきた。

CASE 5 特産品は、基本生産者の方、育てている方の想いがものすごく強くてわかりやすい。目的がものすごくはっきりしている。自分でつくったものを口に入れるというイメージが、農家さんはすごくある。やっていることについて指針も持っているし、徹底している。

CASE 6 クライアントさんがデザインだけじゃなく、デザインを使って前向きにやっていくという意識が高い。そういう人にめぐり合えたのは幸せだし、いい結果が出て、みんなにとっても良かった。クライアントさんも、一昨年の忙しいときに依頼があったが、「今は忙しいので半年先まで引き受けられない」と言ったら、奥さんが待ちますと言ってくれた。これからも付き合いは続くと思う。

◆いいものを作りたい、地域を盛り上げたい、そんな意欲のあるキーマンが必要。
 

世間話もデザインのうち?

地方の様々な人とデザインを提案する上で、どんな話をどのようにしていくかが成功の秘訣です。

CASE 1 クライアントは、何が良いのか、何がいけないのかをよくわかっていない。そこを納得してもらうには、しっかり考え方を説明しなければならない。

CASE 2 一番最初からデザインをぶつけるべきではない。まずやらなければいけないのは、現場のことをわかっているのは向こうだから、デザインをする前が大事。相手に寄り添って、信頼関係を築いて、あなたのことよくわかったという状態になるまでとにかく話を聞くことがとても大事。

CASE 3 作品集には載らないけど、話を聞いている時間が一番長い。これはすごく大事なこと。聞いているから作れるんだと思う。

CASE 4 特徴はなんですか? と聞いても、コメントがない。食べてみないとわからないという。向こうもはじめてのことで緊張していることもあって、なかなか会話が弾まなかった。農法のことは教えてくれるが、それを人に伝えて、こうゆう商品だと伝えたいと言っても、わかってもらえない。

CASE 5 クライアントの話を良く聞く。デザインのテクニックとかは関係ないような世界。「どのくらいの商売をするか」、それで目標が決まる。その額が決まれば、それに使えるデザインの開発費とか販促の費用が決まり、成功の基準、目標額が決まる。それで、そのプロジェクトがうまくいったのか、どうかがきちんとわかる。そして、次のプロジェクトにも生かせる。

◆話を聞き、想いを伝える。基本的なことを確実にやる。
 

プランナー視点は当たり前?!

グラフィックデザインやネーミングだけでなく、商品に対して、トータル的なアプローチが求められています。

CASE 1 ほぼ全部の仕事で、コンセプト開発やネーミングまでトータルで関わった。お客様はそれを求めている。

CASE 2 売れなかったのは、人に贈りたいという形になってなかった。「値段」と「ボリューム」と「商品価値」というものが表現されていなかった。贈り手として「これだったら人に贈れる」コンセプトでリニューアルした。買う側の欲しいところに手の届くように商品を変えた。これがだいたい9億くらい売れている。知らないうちに売れていてびっくりした。

CASE 3 最初はロゴマーク作る話から始まった。現地に行って畑を見ていると、ものすごくいい。生産品の質もものすごくいいので、これはきちっとブランディングして出した方がいいとアドバイスを行った。商品のコンセプトは何もなかった。行って話しを聞くと、土質など、いろいろないい情報がいっぱい埋もれていた。本人たちには、当たり前のことだが、商売のネタとしてとても良いものが転がっていた。ちゃんと活かしていきましょうとネーミングから、コンセプト、パッケージまで提案。今ではその年に作った商品は2ヶ月くらいで完売するほど、人気も出ている。

CASE 4 販路開拓で、都内の百貨店に仕掛けをしたり、そうゆうサポートをしながら徐々に販路を拡大していった。それまでは地元のみ。ブランディングを取り入れて初年度で200%、3年で350%とかなりの勢いで伸びてた。ものがいいというのが大前提。デザインだけではどうしようもない。

CASE 5 デザインだけではなくて、輸入業者に売りの難しさを聞くような、デザイナーの領域を外れて会社全体のことをやっていく。ひとことで言うとプロデュース。プロデュースというと色々やったんだというのが社会に伝わる。デザインの領域よりプロデュースの領域は大きい。上長にOK貰うまでが仕事。資金繰りで銀行の部長にも会う。大まかなマネージメントはやる。

CASE 6 販売数は多くないので、ちょっと価格が高い。物産展や都内の百貨店で、扱ってもらうにはイベント性などのバックボーンがないと説得力がない。全然デザインの力は関係なく、もともとのイベント的な発想が重要。

CASE 7 地方でデザインをされている方は、相談にのることなど踏み込んでやらないと仕事がない。デザインだけやっていたら、ダメ。

CASE 8 関わってないのは中身の製造だけ。ギフトショーで出展するときのデザインも。ブースから出口まで。

CASE 9 農家さんは地元でしか売らないスタンス。そんなに量もつくれない。何箇所か道の駅でも売っていて、売れているが生産量は少ない。そういう話もする。もしいっぱい儲けたいと思うなら、やり方を変えないと無理だとアドバイスもする。

CASE 10 パッケージデザインにそれほど期待をしているわけではなくて、パッケージデザインの他にも色んなことをやって、やっと売れて、特産品になると思う。パッケージデザインは自分が一番得意とする分野ではあるけれど、一部でしかない。

◆相談にのって、何でもやってあげる。信頼関係があればこそ。
 

不便・不自由が生み出す地域のデザイン

不便・不自由な背景から必然と生まれる創意工夫や柔軟な対応が腕のみせどころ。

CASE 1 形とか仕様を決めて。箱にかかる費用をやりとりしていると、チープになっていく。そこに凝るよりもデザインで魅せるとかシールで何とかとか、オリジナルで何とかボトルをつくるとかを考える。

CASE 2 パッケージが要らない場合もある。産直でネット通販だったら段ボールだけで済む。必ずしもパッケージに持っていく必要もない。どう考えても、いい商品にならないなと感じたときはやめたほうがいいと言う。

CASE 3 やっていることはプロデューサー以上。デザイナーというと小さい感じがするが、新しい価値をつくる人。グラフィックデザイナーと自分で言ったことはない。美味しそうに見えるのがデザインの競争である。美味しそうに見えるかを競うデザインのコンペはない。

CASE 4 言葉もデザインの一部。そういう意味ではデザイナーはコピーライターを含んでいる。プロ的な言葉ではなく、なんの嫌味もない普通言葉で素人っぽさがある方が伝わりやすい。ローカルの田舎で、わざわざコピーライターという職種の人に頼む必要はない。

CASE 5 どうしてもデザインが必要だからと紹介されたクライアントが多い。以前は、地元のみやげものの開発で、どうしても「地元らしいイラスト入れてください」、「有名観光地は絶対入れてください」という条件があったので、そういうのは、お断りするようになった。

CASE 6 どこで売りたいかの希望を聞く。今現在こうゆうところで売っているけど、例えば東京の百貨店のギフトにしてもらいたいと話が出れば、そういうデザインを作る。売り場によって、道の駅で売るのか、スーパーで売るかでデザインが全然違う。そこらへんは把握して、理解してデザインする。

CASE 7 地域のブランドやデザインというのは小さくはじめることしかできない。パッケージも小さい。そして手作りで少量だけど素材にこだわって多品種のラインナップを出す。量産はきかないけど、ちょっといいものを作りたい。

CASE 8 成果はすぐには出ないと思っている。地域を表現するのはどういうことか、常に考えているけれど、飾らない素朴でシンプルで洗練させたい。素材がいいので飾りたてたくはない。

CASE 9 当然相手の企業の規模が小さいのであまり予算をかけられない、小さくはじめるので、デザインの仕事の料金も小さくはじめる。

CASE 10 少量多品種なので帯巻きのパッケージは印刷メーカーはやらない。プリンターで出力して、切って貼り付けている。それでもちゃんとしたパッケージとしての体をなして、商品になる。量産しなくてもお金かけなくても工夫次第でいいものができる。

CASE 11 島にまつわる、ありそうなことを妄想して物語を作った。そこに出てくるものを商品化。ロマンチックな物語に商品を乗せていったというのが、今までなかったこと。それがうまくいった。

CASE 12 パッケージの形にするまで、デザインの仕様をこちらで決めるが、実際に制作する印刷会社と密にできるかもひとつのポイント。

CASE 13 相談されやすいと思う。誰に相談していいかわからないというのは地方ではよくあること。きっかけがなかなかない。地方に住んでいる場合は、自分の人脈をなんでもいいから広げておくのは大きなメリット。

◆「小さく始める」、「物語を作る」など、発想力が必要です。
 

顔の見える生産者・顔の見えるデザイナー

「会社」と「会社」というよりもむしろ「人」と「人」。高く信頼できるデザイナーが求められています。

CASE 1 クライアントには、一度オフィスに来てもらう。企業のオーナーや代理店のディレクターに、うちの作品を見てもらって、うちの考え方でいいですかねと確認する。紹介いただいたときも電話だけでなくて一度来ていただく。その後、デザインはまかせてねとなる。

CASE 2 今のところ、デザインの重要性を感じてお願いしてくることが多いので、そこはこだわってくださいという話が多い。

CASE 3 結果がどうなったかの追跡をできる関係ではないと、その後どうなったのかわからない。

CASE 4 地域に溶け込むこと。デザイナー風を吹かせない。東京あたりから来るとかっこつけてくる。

CASE 5 一度、一緒に農家さんのところに行って、手伝って、食べ比べしたりしたときは、すごく流暢に話をされて。同じ木でも(果実は)上と下でぜんぜん味が違うとか、日の当たる量によって違うとか、そんな説明をしてもらって急に友情が深まった。机の上でやっても話にならなくて。現地に行ってみんなで収穫して説明受けながらやることによって、向こうも知って欲しい、こっちも知りたいという需要と供給がちょうど良い感じになって、そこからすごく盛り上がりはじめた。

CASE 6 スタッフの一人としていろんな意見は言わせてもらった。

CASE 7 発注者担当者とのコラボというか、お互いの息が合った。うまくお互いの目的意識が統合した。

CASE 8 相性がとても大きい。地域の産品においては、生産者とデザイナーの相性。アナログ的な話だけどこれが大きい。僕の提案したことに共感してくれて、始まる。

CASE 9 一緒に商売していくという感じ。こちらも売り上げが伸びないとデザインのギャラが入ってこない。無理やり請求するのもできないので、売り上げに貢献しないといけない。そこら辺のサポートもする。

CASE 10 付き合いは長い。あまり押し付けることはないが、これがいいと言ったら、だいたいは信じてもらえる信頼関係ができている。お客さんもデザインが好きだし、理解している。

CASE 11 直接会って話せるから仕事が早い。自分のデザインの実績を見せると、「ここまでやってくれるなら」という安心感があるようだ。とにかくデザイナーなんて何者だかわからないと思うので。公共団体の紹介で来たら余計に信頼もしてくれる。飛び込みで行ったら「なに、お前?」って言われそうだ。彼らはやりやすいといえばやりやすい。

CASE 12 理解してもらうのはやっぱり成功例を言うのが一番よい。最初の頃は成功例もなかったので、「流行れば売れます」と。おしゃれな人たち、オピニオンリーダーに手を出してもらえないとダメだと言っていた。しかし、今は新聞に掲載されたり、経済ウィークリーで発表された売り上げ数字など、公表された成功例を見せると、間違いなく納得してくれる。

CASE 13 人と人とのご縁で、出会いにはドラマがあり、売れるためには必要なことです。

CASE 14 そんな時にはこんな使い方したらどうですかなどと、プラスαの提案をしている。

◆顔を見せて「この人なら」と信用してもらう。最初が肝心。
 
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深〜く、そして長〜く

クライアントとのお付き合い。

CASE 1 クライアントと深く関わればその商品が売れているかのフィードバックもあるし、問題があればあとからケアもできる。

CASE 2 関わりが薄いクライアントの付き合い先と仕事をすると、コストのことなど深く話ができず、形にはなるが、うまくいかない。

CASE 3 その場でぱっと答えはでないが、長い期間をトータル的にみていくことが、結局は地域のものは地元で定着してそこから発信していくというところが大きな力になる。

CASE 4 長くお付き合いいただいているクライアントに関しては、満足いただいていると信じるしかない。新商品やリニューアルのときは、必ず声がけいただいて、ラインナップの9割9分くらいはデザインさせていただいている。

◆じっくり向かい合って仕事をする。忘れかけていたことかもしれません。
 

お金は天下の回りもの?

注目される行政からの仕事や補助金。うまく活かすまでには様々な課題があるようです。

CASE 1 行政さんは、いろんな補助金を使って売り上げをあげるのではなく、仕事をやることが目的になっていて、目的がずれることがある。そんなときは非常に中途半端に終わることがあって困る。作業を終わらせればいいと思っている。こちらは、それなりの成果を地域なり企業に与えるのが目的だと思っているので、そのあたりの目的意識が違っている。そうゆうのが地方で多い。

CASE 2 6次産業化の仕事で、助成金がおりるから産品つくってみようと、ちょっと不埒な考え方の開発は結局お金を使い果たしたところで終わってしまう。気持ちが入っていない。

CASE 3 国の補助金を申請して受理はされたけど、お金の使い方に色々なしばりがあって、自分たちがやりたいことをやれない状況になるのは嫌だから自腹でやることになった。そういう気持ちもデザインに影響してくる。

CASE 4 最近は地方創生なんて言って、地方にお金をあげるから、なんとかしろと言うのが国のシステム。そんなクライアントは、依頼の際に、金はあるという。彼らは多くの書類を書いているが、こちらは知らない。

CASE 5 「ミラサポ」という行政が色んな専門家を派遣する制度がある。1時間5,000円の料金を専門家に支払い、色んな相談に答えてもらう事業。しかし、ウチの県はその中でデザインも作ってくれという。年間3回1日6時間めいっぱい使うと9万円補助金が出る。その9万円の中でデザインもやってくれという、すべてではないが。私も仕事だし、クライアントからは熱心に思われているが、デザイン料が払えない。でも商品を売りたいというクライアントには、たまに仕事を請ける。

◆補助金がもらえるから何か作ろう、では何も伝わってこない。

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ここだけの「お・は・な・し」

熱い気持ちは大事。でもやっぱりデザイン代のことも大事です。

CASE 1 お金の話を最初に必ずするようにしているのは大きいと思う。熱意のある方だとお金の面も補助金などで何とか解決しようとしてくれる。そうした熱意のある方とはうまくいく。

CASE 2 嫌がられました。自分はこれまで修行したところが一番高いところで、そこの金額がベースになった。一番高いと言われているが、東京と比べたら知れてますよね、ということで少し高くいただいている。地方によって文化も違えば金額も違う。

CASE 3 安めにデザイン制作をするセカンドブランドの会社を作って間口を広げる努力をしている。

CASE 4 スタート前でつまずく。支払いの問題などで、仕事上の直接的なプロセスの問題ではない。

CASE 5 面白いのは、スタートラインでは0円というか0以下。明日潰れるかもしれない。デザイン料を最初に100万くださいという話ではない。だけど、「20億稼いだら僕にくれるよね」という世界でやっていく仕事は、力が入っておもしろい。

CASE 6 我々としては、売価に対して無理のない提案をしているつもりだが、クライアントは、それは「仕入れ」として考える。パッケージデザインの料金を売価にオンしてもらえば、むしろ計算は早いと思う。

CASE 7 コピーライターや、ちょっとイラストをプロに頼みたいと思ってクライアントに料金を提示したら、「ダメだ」と言われた。他に比べてデザインの必要性をわかってもらっていると思うが、実際は「安い方がいい」ということもある。

CASE 8 料金は、一応項目に分けている。コンセプト提案、ネーミング、シーリングのデザインとか。そして、それのバリエーション展開。

CASE 9 デザインの料金に、結果だけではなくて、相談など見えない部分が含まれていることを理解してもらい、それが含まれた適切なデザイン料をもらった時はうれしい。

CASE 10 デザインの制作をする時、クライアントと外部のデザイナーを引き合わせる。この人がこれだけの時間をかけてやっているのだから、わかりますよね?と話をする。例えば3日間仕事しました。「人が1日働いてそれが特殊技能なら1日いくらかかる」と言うと納得しやすい。コミュニケーションとして伝えないと適切なデザイン料は得にくいと思う。

◆デザインの重要性を理解してもらうための工夫があります。
 

デザインは誰のため?

デザインと地域貢献の結びつき。

CASE 1 地域の振興や発展に貢献については、商品が覚えてもらえるようになったなど嬉しいお声を聞く。

CASE 2 組合の婦人部がこのままだと潰れそうだということで、お母さん方を元気にするにはどうするか? 最終的に商品開発となってパッケージとなった。その商品パッケージが大きな賞を受賞して授賞式に招待されたりすると、みなさんのスキルはどんどんあがる。物が売れることよりも、関わる人がどう元気になるのかがポイント。今では、みんながどんどん商品を開発し、パッケージの提案もする。

CASE 3 デザインって本当に社会貢献できていると思う。面白いのが、最初は反対が多く、理解できないものにぶち当たるが、一年二年経ってくると成功が見え始める。大きく実るまで待つ。長くコツコツと細かい面倒をみる。そして、成果をあげると信用がつく。

CASE 4 地元ではまだパッケージができる人がいないこともあり、パッケージの必要性をわかってくれるクライアントが少ない。1軒1軒から仕事を広げていくことから始める。

CASE 5 「国土の均衡ある発展」という戦後のコンセプトは、ローカルを安心させるものだった。どんな山に住む人も置いていかれないと思った。「国土の個性ある発展」といわれたら、自分のところには、砂浜がある、栗がある、山がある、馬がある、と思ったに違いない。しかし、「国土の均衡ある発展」についていったら、こんなにフラットになってしまい、どこに行くのも楽しみじゃなくなった。デザインで地元の個性を。デザインで、あ、福島だ、青森だとわかってもいいじゃないか。

CASE 6 今までデザインというものを考えていなかった生産者が、デザインをやっている商品を見て検討を始める。地場の貢献というよりは我々の業界に対してそれなりに何かできたと思う。

CASE 7 個人事業主さんばかりなので地域に貢献していると思う。デザインの啓蒙にはなっている。やっぱりプロがやると違うよねと言われる。下手をするとみんなプリンタでラベル出している。バイヤーさんたちから「ちょっとこのデザインでは売れない」とか、「安っぽすぎる」と言われて、じゃあプロに頼むためにはどうするかと悩んでいるようだ。

CASE 8 デザイン以外にも地域の担い手としてやらなくちゃいけないことが色々あって。何をやるにも人材が足りないので、催しものや、イベントや、地域活性化や、色々力を貸して欲しいとか参加してほしいとか。村祭りからはじまって、冠婚葬祭まで。

◆この強い気持ちが、地域での原動力。
 

デザイナーのジレンマ

デザインを実際していく中で感じる細かな問題点や感じる事。

CASE 1 地域のプロジェクトは地域に主役がいないと駄目。だから僕らと一緒に、本当に地元を盛り上げたいとか、地元と外のブリッジを作り上げたいと企んでいたり行動力があったり、地域にプロデューサー気質の人がいることが大きい。

CASE 2 きちっと成果を出して初めて認められると思う。いろんな人が絡んできて、なかなか言ったことが通じないところがジレンマになっている。

CASE 3 販売・生産されている人との関わり方が薄いと、結局こちらも入り込めない。

CASE 4 普通はたくさんの人が関わってデザインがしっかり練り上げられて世に出て行くが、特産品のデザインは関わる人が少ないのでクライアントがOKといった時点でOKとなる。フィードバックがあって練り上げられていくことが少ない。プロセスが簡単になってくるので、面白いところでもあるが、クオリティがちょっと落ちてしまうこともある。

CASE 5 パッケージデザインがブランドイメージを形成するので、そのためにパッケージデザインを考えている。それが売れると、クライアントが勝手にデザインを変えてしまって、ブランドイメージを崩してしまうのが残念。そのことを言ってもよく理解してもらえない。

CASE 6 予算のこともあるかもしれないが、そうではなくて、自分の好みで変えてしまう。こちらがクライアントの好みを反映させない場合も多い。「それはおかしい」、「それは売れない」と言ってしまうと、「自分の好きなようにさせろ」となって、勝手に印刷会社さんに変えさせてしまう。地方だと結構こういうケースは多い。

CASE 7 ブランドとして成り立つようにやっているのにクライアントが、めちゃくちゃにする。そうすると成果はあがらない。わかっていないということをわかってもらうのが大変。口すっぱく言うと、「うるさい」といわれる。

CASE 8 小洒落たものがローカルに出てきた。みんな同じになっていく。地元にデザイナーが戻ってきて、ふるさとの仕事をやりだした。新幹線がどんどん出来てきて駅が一緒になった。高速バスが出来てきてどの町も一緒になった。デザインも小洒落てきて、これでいいのかと疑問がわいた。

CASE 9 それぞれの土地の風土やそこにあるものに、「自分たちの村はこうゆう村だから、こうだ」というのがなくなった。ローカルのデザイナーでさえみんな東京の真似したらということを憂いている。東京のものを見たらかっこいいから、私もこんなのやってみようというのが怖い。逆だったらおもしろい。

◆まだまだブランド、デザインについて理解してもらうことが必要なようです。
 

やりがいも自分次第

色々な苦労や失敗がある中で、どんなやりがいを見いだすかはデザイナー次第。

CASE 1 地場産業のお客さんに対して良いものとなると、モノが売れてお客さんが喜んでくれることかもしれないが、それをひとつのやりがいとして考えると、デザイナーとして満足できることが少ない。

CASE 2 パッケージにしても空間をつくるにしても、自分の意見が反映されるということがやりがい。

CASE 3 例えば商品なら売れて、買った人にとって期待通りの中身があって、そういうことが一番ハッピーだと思っている。

CASE 4 俺は金なしでやっている方がモチベーションが上がる。結果を出さないとお金が入らないところに、面白味がある。

CASE 5 ローカルのコンプレックスありすぎる。自分たちの個性と思っていなくて、コンプレックスと思っている。山があって急斜面で木を植えている個性があるがゆえに、都会では売れないとなる。考え方次第で素敵なものは世界に、ニューヨーク、パリ、日本の田舎も一緒だということをやりたい。

CASE 6 最初なくても、金が0円から1億円生まれれば、成功につながる。お世話になりましたという部分をつくらないと、共倒れしてしまう。そうゆうのが、成功させるモチベーション。

CASE 7 小さい生産者さんたちと一緒につくる仕事もある。予算もぎりぎりな中、基本的にメッセージを発信しつづけることで徐々に定着していき、中身とともに買ってもらえる力になると考えている。作る過程で、そこに込めたメッセージをデザインとして形にしていて、その過程を私自身やりがいと感じているし、クライアント自身もそれをモノ作りの意欲に変えていることがわかるので、それがやりがい。

CASE 8 やっぱりダイレクトに喜びとか感じることができる。直接、経営者さんと仕事をすることが多いので喜怒哀楽が具体的にわかるのが面白い。

CASE 9 生産者と直接話をして、いろいろな話を聞いて、一緒に商品を作り上げるのが楽しい。

◆やっただけ結果がでる、わかりやすいから、やりがいも大きい。

ニッポンのパッケージデザイン<2015年度調査>デザイナー調査

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