リサーチ & 研究報告

調査研究委員会 研究会レポート
「ニッポンのパッケージデザイン研究」プレオープン記念「梅ちゃんに聞く」(2012年3月)

講師:梅原 真氏

開催日時:平成24年3月7日(水)18:00~20:00
開催場所:東洋インキ本社ビル 9F 大会議室
参加者数:120名

梅原真氏を東京に招いて念願の研究会開催が実現しました。当初は80名の参加者を予定して案内をかけたところ予定を遙かに上回る120名の方々の参加となりました。
講演の内容は氏の「考え方」を元に今までに手掛けてこられた作品をエピソード交えて紹介されました。

最初に説明されたのは、氏が大切にしている基本的な「考え方」。それは経済的観念による相対的な順位づけには何の価値もなく大切なのは足元にある「絶対価値」だと。そしてその絶対価値は観光資源であり、その土地、例えば高知でしか出来ない事を考えることだ、と語ります。
次に、氏の「考え方」に強く影響を与えた赤瀬川原平さんの作品「宇宙の缶詰」が熱く説明されました。缶詰の内側にラベルを貼り缶詰の外側が宇宙になる、宇宙そのものをラップするという考え方に非常に感動され「たったこれだけのことでこんなおもろいことが出来るんや」と。ここに氏の発想の原点である「マイナス×マイナス=プラスだ」というのが垣間見えたような気がしました。

ご本人が大切にしている冒頭の「考え方」や影響を受けた「考え方」の話を聞きながら、氏が実際にデザインを手がけた「しまんと地栗パウンドケーキ」「しまんと紅茶 shimanto RED」を試食、試飲。続いて作品紹介を交えながらが独特の「考え方」の語りが始まりました。

まず紹介された作品は「大方町の砂浜美術館」、参加者の思い思いをプリントしたTシャツで砂浜を埋め尽くす企画や大方町の砂浜に打ち上げられたゴミ(漂流物)まで使ったポスターを制作した町おこしの話。赤岡町で毎年行われる「絵金祭り」では、江戸時代の闇夜の臨場感を再現、街灯も消して屏風絵を蝋燭一本で照らしたところ、訪れる観光客が4倍になったといいます。また、滋賀県信楽町での年一回(11月8日)の「たぬき休むでぇ~」は、信楽焼きの象徴・たぬきの置物にアイマスクをつけるなどしてたぬきを休ませるというイベントで、これは「たぬきを隠したらどうや」という氏の言葉がきっかけで町の人たちが「わたしたちやりますよ!」と本気で取り組んだ例。

このようにその町の原風景を活かし、お金をなるべく使わずに町を活性化する、まさに原点価値の「考え方」がよくわかりました。
特に響いた言葉は、赤岡町の絵金祭りの屏風絵の話で「みんな幕末時代は蝋燭1本でこの絵を見ていたんや!なんで明るい照明の下でこの絵の魅力が伝わるんか!?」と。「文明の便利さがモノの本質を分からなくしてるのと違うんちゃうか!」

いよいよ氏のトークもエンジン全開でパッケージデザインの話へ。まずは、土佐の一本釣り「“漁師が釣って 漁師が焼いた” 藁焼き鰹たたき」のパッケージデザインでの拘りの話。続いて「手摘みの四万十茶」「自家発酵 shimanto RED」、高知ひまわり乳業とコラボした「ロイヤルミルクティ」。さらには「紅茶巻(実は四角いロールケーキ)」での現場取材からしまんとの茶畑風景を残すために奮闘した商品開発話。「田舎にスキルがあってたまるか」とネーミングから売り方まで計算してデザインした「しまんと地栗」(スタジオジブリになんとなく発音が似ているのも採用の理由!)「原木しいたけ」「やまのてっぺんましろのみかん」等、期待以上のお話が聞けました。氏は必ず現場を取材、商品の本質を深く探求し、その商品の本質をいかにわかり易くしかも印象に強く残せるかに全力を注いでいく姿勢が感じられました。氏曰くパッケージデザインは「コミュニケーションデザイン」であり「情報を消費者にキチンと伝える」ことだと。

パッケージデザイン以外にも、四万十檜の間伐材や端材をカットし、檜オイルの香りと焼印の付加価値で1億の売上になった「四万十ひのき風呂」(ユニットバスもひのき風呂の香りに!)の開発事例や「四万十川を新聞紙で包む」モノづくりが「地球を新聞紙で包む」環境のコトづくりへと大きく発展していく話などが続き、目からうろこの「考え方」「考え方」「考え方」尽くしでした。

最後のスライドは、東北新幹線での売上No.1の車内販売員。その売り方には氏も絶賛、これまた「なるほど」と言える話でした。その売り方とは他の販売員とは異なり進行方向に背を向けカートを引きながらバックで移動、通り過ぎても乗客と目が合うようにとのことです。
これも、これからのデザインの「考え方」に活かせそうですね!
最後に、梅原さんからの

~デザイナーとは~「モンダイカイケツ者」であり「(作り手と生活者の間の)パイプを太くする者」

という言葉で〆となりました。

講演が終わり盛大な拍手の後、北海道、富山、岡山の3名の方々から質問があり今回のセミナーに対する各地の方々の関心の高さが窺われました。デザインフィーの値付けのありかたや、どういうわけか銀座の高級感を求める各地のクライアントの話や、梅原氏の若い時代の原体験などと最後の最後まで「いい話満載」の研究会でした。

担当委員会:調査研究委員会
担当理事:桑 和美/中越 出
担当委員:足立美津子/小川 亮/加藤憲司/木嵜日出郷/北山晃一/小阪ゆき/齋藤郁夫/高田知之/西島幸子/秦 智子/原 雅明/平尾朋子/藤森 宏

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