調査研究委員会 研究会レポート
「今だからこそ北欧スウェーデンのエルゴノミクス(人間工学的視点)からユニバーサルデザインを学ぶ」(2011年7月)
講師:ダーグ・クリングステット氏(基調講演) 高田知之(委員会報告)
開催日時:平成23年7月6日(水)19:00〜21:00
開催場所:東洋インキ本社ビル 9F 大会議室
参加者数:65名
ダーグ・クリングステット氏 プロフィール
Dag Klingstedt エルゴノミデザインジャパン株式会社代表
スウェーデン ノールショ生まれ、ストックホルム大学卒(日本学専攻)、1984年 スカンジナビア最大手の家電・自動車雑誌の日本特派員として来日、以降、在日スウェーデン大使館二等書記官、コンサルタント会社やスウェーデン貿易公団、メーカーその他のアドバイザー、開発マネージャーなどを歴任、2001年エルゴノミデザイン社日本駐在員事務所設立、2002年9月エルゴノミデザインジャパン株式会社設立(スウェーデン エルゴノミデザインAB社の100%子会社)代表に就任
協会ホームページに調査研究委員会の新しいコンテンツ「[ユニバーサルデザイン&パッケージ]情報の森」が6月30日にグランドオープンしたことを記念し、ユニバーサルデザインを学ぶ研究会を企画しました。
当日はまず委員の高田知之氏から、上記コンテンツの概要の説明をし、ユニバーサルデザインへのご理解を深めた後、ダーグ氏から「今だからこそ北欧スウェーデンのエルゴノミクス(人間工学的視点)からユニバーサルデザインを学ぶ」と題して基調講演をいただきました。
11歳の時に映画「007シリーズ/007は二度死ぬ」(ショーン・コネリー、浜美枝、丹波哲郎、他出演)を観て日本はクールだと感じ、その後来日し、在日歴約30年のダーグ氏の流暢な日本語で基調講演は始まりました。
まずは母国スウェーデンでエルゴノミクス(人間工学)が発展して来た背景を。スウェーデンは第二次世界大戦に参戦しなかったため、1960年代から一足早く高齢化社会に突入しました。そのため高齢者や障害者に使い易い機器の開発が積極的に行われ、1969年には国立障害研究所が設立され、エルゴノミクスに基づいた研究が始まりました。
同年エルゴノミデザイン社は設立され、エルゴノミクスに基づいたプロダクトデザインを開発して、現在までに700プロジェクトが完成しています。6割は医療・福祉機器、工具、育児用品等が占めるとか。ダーグ氏は2002年に設立されたエルゴノミデザインジャパン(株)の代表を務めています。
セミナーではエルゴノミデザイン社の開発メソッドをたくさんの事例と共にご紹介いただきました。商品開発の最初から関わることが殆どで、そのため予備調査は問題の理解のために特に丹念にしているそうです。事例のお話しは、デザインとは?エルゴノミクスとは?デザインによるブランドの確立とは?といった疑問にもご教示を頂けるものでありました。なかでも印象に残った言葉を以下にご紹介します。
「日本人は設計・外観など見えるものをデザインと思っているけれど、問題を解決するのがデザインである」
「外へ出て人と会い、問題を理解する」(ユーザースタディに関して)
「エルゴノミクスには3つの側面がある。物理的(疲れない等)、認識的(分かりやすい)、感情的(欲しくなる)。3つ全て実現出来れば売れる!」
「日本の会社はデザインを投資ではなく、コストと思っている。コストはカット出来る。」
「ファンは大事!継続性のあるデザインでブランドは確立する。」
最後は委員が準備していた質問を差し挟む隙も無い程、活発な質疑応答が行われ、盛況の内に幕となりました。
担当委員会:調査研究委員会
担当理事:桑 和美/中越 出
担当委員:足立美津子/小川 亮/加藤憲司/木嵜日出郷/北山晃一/小阪ゆき/齋藤郁夫/高田知之/秦 智子/原 雅明/平尾朋子/藤森 宏