調査研究委員会 研究会レポート
「現代における『デザインの新しい役割』の発見 ~そのヒントとプロセス~」(2010年7月)
講師:飯島ツトム氏(基調講演)、中越 出(委員会報告)
開催日時:平成22年7月6日(火)19:00~21:00
開催場所:DIC日本橋本社ビル 17F 大会議室
出席者数:57名
2009年に会員専用サイト内に立ち上げた「〔環境配慮型パッケージ〕情報の森」のグランドオープンを機に、外部講師を招いての基調講演と委員会報告による研究会を開催しました。
基調講演には、『現代における「デザインの新しい役割」の発見 ~そのヒントとプロセス~』との演題で、環境プランナー、コンセプターとして活躍するCO-WORKS代表・飯島ツトム氏に講演をいただきました。 飯島氏の講演は、副題が「環境コミュニケーションとデザインの新パラダイムを探る」。環境問題の背景や変化していく社会のありかたなどから始まったお話は、人と人とが有機的につながるライフデザインへと展開していきます。
基調講演の主な内容(レジュメより)
1.環境コミュニケーションと持続可能なコミュニティー
2.環境問題から環境コミュニケーションへ
3.ひとりひとりがつながるデザイン
4.新ライフデザインのための9のキーワード
5.異種複合競技としてのデザインフィールド
6.オープンイノベーションの場づくりへ
ひらがな4文字で提示された9のキーワードは、さまざまに考えを巡らせることのできる言葉たち。
共通するのは生きている人がそこにいることでしょうか。ライフデザインマトリクスと名づけた由縁かもしれません。
デザイナーが領域を超えて、オープンにイノベーションを進めていく、その方向性やプロセスも示されました。
「デザインとは、大切なことをみえたり、さわったりできるようにすること」「デザインを職業とする人たちは社会にどう見られているか?」「デザインというもののブランディング」といった言葉も印象的でした。
独特の言葉を多く投げかけられた時間。それらを考え、何らかの回答を導き出すのは、言葉を受け止めた私たち自身ということになります。 セミナー後のアンケートには、「デザインの可能性の大きさが感じられた」「視点が変わりました」「デザインに対しての意識が広がった」といった感想が多くあり、出席者一人一人が「デザインの役割」を考えるきっかけとなったことがわかります。
<参加者アンケートでの質問に対し、後日飯島ツトム氏より回答をいただきました>
アンケートへの回答 飯島ツトム
たくさんの質問ありがとうございました。一つ一つの質問を拝読させていただきました。当日は日頃の実務の中で、デザインという仕事に対する視点をお話ししましたが、多くの方々の想いを感じとることができ、大変有意義な時間をいただいたことを深く感謝いたします。
Q:「たいせつなこと」は、共有されつつあるのでしょうか?
A:日本人が発見した「たいせつなこと」は確実に共有されつつあると感じます。ただし教育現場においては、まだまだ出来ることがたくさんあると考えています。
小学校にデザインルームを!
ひとつは小学校の中にデザインルーム(デザイン・サービスセクション)を設け、学校現場における様々なデザインニーズ(校庭、校舎のデザインから教材のデザインまで)に応えられるようになったらと思います。子どもたちは、デザイナーとプロセスを共に体験することによって、科学的思考と感性的思考に触れることができます。また、デザインプロセスの中で数々の意志決定に出会い、そのコトによって自分たちの環境を改善することが、大人たちと齒盾ノできることを体験することは意義のあることではないでしょうか?
Q:「デザインフィールド」のパートで面白そうなキーワードがたくさん見受けられた。(渋滞学等)もう少しそのあたりの事例やデザインの役割を知りたいです。
A:機会があれば、その時にお話ししたDESIGN CAMPの場で、共有したい思っています。デザイナーがナビゲーションする、研究者とデザイナー・アーティストと企業のイノベーションの場づくりです。様々な方々とのコラボというカタチがよいかもしれません。具体的な取り組みついても説明する機会があればいいですね。また、現在<fィカル・デザインのアワードを企画構想中です。詳細はまだお伝えできませんが、企画が固まりましたらお知らせさせていただきたいと思っています。
Q:9つのキーワード、それぞれを色で例えると何ですか? また、その色を挙げた理由も教えていただきたいです。わたくしのイメージは全部墨色、言葉で表すと「幽玄」という文字ですね。見る人や状況によって、いろいろな色を放つといった感じです。みなさんと、色について、アイデアを共有できたら楽しいですね。
A:CO-WORKSを行う時(セッションとして行く時)、「行き先」を明確にしていく過程で ご自分の視点はメンバーのさまざまな考えの中でどの辺におかれますか?
課題やプロジェクトの性格によって、行き先の明確化を意識的に行う場合と、談論風発で自然な成り行きを狙う場合があります。メンバーの性格や取り合わせ(マッチング)を考え、グループダイナミクスの最大化を目指しています。
自分自身ではファシリテーターの目線であると思っています。
Q:エコロジーというものが、ビジネスシーンでは、利用価値のある利益を生み出す為の戦略として使用されているところがありますが、それでもやらないよりずっと良いと思いますが、その他にどのようにポジティブにとらえられるものなのでしょうか。
A:環境コミュニケーションという言葉をつかいはじめたころ、各企業に窓が開いたと感じました。むしろエコロジーという枠を超えたところに意義があると思います。時間はかかると思いますが、本質は社会に信頼をもたらすことが目的で、エコロジーはその一要素でしかないと考えています。
Q:過去最も感動したプロジェクトは?
A:今やっている最新のプロジェクトです。もっとも感動しているプロジェクトは、進行中のプロジェクトです。未知数のあるほうが感動が大きいようですね。達成感という意味では世界万国博覧会の歴史をまとめたプロジェクトです。「科学技術と人間」の歴史を年表にしました。残念ネがら、学術情報誌とし出版しましたので、非売品です。
Q:時代より進んだ考えをお持ちだった飯島さんは、生き苦しいと感じたことはありましたでしょうか。
A:それが、あまりないのです。制約条件は開発条件と認識し、なんとか工夫していました。(笑)だだ、海外行く際に、離陸した飛行機の中でえもいわれぬ開放感をもつのはなんでしょうね。アウェイでの仕事が多いからかもしれません。
Q:とても共感しました。CO-WORKSのプロジェクトに携わることは可能でしょうか。
A:共感していただいて、ありがとうございます。プロジェクトに関しては多様なプレーヤーと具現化に向けて協議をしたいと思っています。特に地域ブランディングに関しては、海外を含めた地域再生の新しい枠組みのために、組織編成中です。
Q:何を糧に仕事をされていますか?ポリシーを一言でいうなら。
A:「日々の散策と観察」好奇心がエンジンです。 職名を「散策家」にしたいですね。
Q:日本では、単なるデザインの領域にすぎないものが「職能」になってしまったのか?教育の問題か、企業の事業の問題か?デザイナーの成長がない理由は?(トータルな分野で活動できる)
A:
1.デザイナーに対する待遇
2.デザイナーの人間的成長に対する支援による、スポンサーシップ教育
3.デザイン自体のブランディング(存在意義の限りなき探求)
と分析しています。デザインという言葉も手垢にまみれ、宙に浮いています。デザイナーは村の中ではなく、異種混合競技に参加できるようになれたらいいな思います。私のなかでは、プロダクトデザイン(物性・造形)とコミュニケーションデザイン(情報と理解化)とエネルギーfザイン(エネルギーレベル)の三つのカテゴリーでデザインの再編成を考えています。
端的に言うと、デザインマネジメントと意志決定システムが課題です。
また、委員会報告では「〔環境配慮型パッケージ〕情報の森」サイトの内容紹介と今後のコンテンツ充実に向けての考察を報告しました。アンケートでの調査研究に関する意見は、今後の委員会活動の参考としていきます。調査研究委員会初の研究会へご協力いただきました皆様に御礼申し上げます。
担当委員会:調査研究委員会
担当理事:桑 和美/中越 出
担当委員:足立美津子/小川 亮/木嵜日出郷/北山晃一/小阪ゆき/高田知之/竹本えつこ/秦 智子/原 雅明/平尾朋子